アメリカの「正義」に問う。原爆投下は一体何のためだったのか?

 

日本は降伏しようとしている

冒頭で引用した「日本は降伏しようとしている」とのアイゼンハワー司令官の言葉は、まさに当時の米国首脳部に共通の認識であった。

日本の暗号はすべて解読されており、日本政府内のやりとりは筒抜けになっていた。7月12日には、東郷外相がモスクワの佐藤大使にあてた電報が傍受されている。

天皇陛下は、現今の戦争が日々、すべての当事国の国民により大きな災いと犠牲をもたらしていることに配慮され、心より早期終戦を望んでおられる。

そして戦争終結に向けてソ連の支援を要望する親書を携えた天皇の特使をソ連政府が受け入れるように要請していた。

日本の降伏を阻んでいた「無条件降伏要求」

日本の降伏に最大の障害となっていたのは、ルーズベルト前大統領が言い出した「無条件降伏」であった。無条件降伏ともなれば、占領、賠償金、領土割譲、戦争指導者の処刑など、戦勝国に何をされても文句は言えないわけで、国政に対して責任を持つ政府が受諾できるものではない。無条件降伏を求める事は、「全滅するまで戦うしかない」と相手を追い詰めることに他ならない。

降伏条件を明確にすることで、日本が望む降伏への道を早く開き、連合国側の犠牲を食い止める事ができる、というのが、当時の米国首脳部の一致した意見であった。

トルーマン大統領に対して、「降伏条件の明確化」を訴えていたのは、グルー国務長官代行、フーバー元大統領、レイヒ大統領首席補佐官、スティムソン陸軍長官、バード海軍次官、統合参謀本部など、米国指導者のほとんどであり、チャーチル首相と英軍トップの指導者全員がこれを支持していた。

さらに米国のマスコミも、ワシントン・ポスト、ニューヨーク・タイムズ、タイム、ニューズウィークなどが条件明示による早期戦争終結を主張していた。

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