中村うさぎ流・子育て論。幼い子どもに「1+1=2」なんて要らない

 

【中村うさぎの回答】

のまのまさん、私が思うに、あなたはとっても健全なお母さんです。

私は元来、幼児の詰め込み教育には批判的です。子どもの頃にはもっと他に学ぶべきことがあると思うからです。

たとえば「1+1=2」なんて、幼い頃には知らなくてもいい。
それよりも1個のリンゴが無限に増えていく物語とか、世界で自分がたった1個だと思っていたリンゴが別のリンゴに初めて出会うお話とかを、子どもと一緒に考えていくような、そんな幼児教育を私がお母さんだったらしたいと思います。

幼い子どもに必要なのは、突拍子もない創意工夫自由な想像力だと思うからです。
「1+1=2」なんてことを先に覚えてしまったら、思考が枠にはまってしまい、そこから先の想像力が広がらなくなるような気がする。あくまで「気がする」だけですが。

なので、のまのまさんが「子どもらしく走り回って」いる我が子を無理やり机に座らせて勉強させたくない気持ちは、私もひどく共感します。だって、そんなことしたら、勉強の嫌いな子どもになっちゃうよ。
子どもは放っておいても学びたがる生き物です。「なぜ?」「どうして?」と訊いてくるのは、知りたいからです。
そして、知りたいことを知った時にこそ、人は「知識を得る喜び」を味わいます。

その喜びを知った子どもは学ぶことに積極的になる。
べつに知りたいとも思ってない知識を無理に詰め込まれるより、知りたいことを知る喜びを体得した子どものほうが、大人になってからの思考力の伸びが違うと思います。

もしも私に子どもがいたら、もっとも伝えたいことは何だろう?
それは「世界の広さと多様性」です。子どもの頃は、やたら世界が狭いものです。自分の家庭と学校くらいしかの広さしかない。
だから、そこで弾かれてしまったら、途端に絶望する。

だけど、この世にはさまざまな人がいて、いろいろな価値観があることを知れば、「ここではない別の場所」があると信じることができるでしょう。
ここで弾かれても、別の場所に行けばいいのだと思える、そのような柔軟性と視野の広さを教えてあげたら、子どもはもっと生きやすくなる気がするのです。

もちろん、私には子どもがいないので「絵空事だよ」とか「現実味のない理想論だ」と言われるかもしれません。

でも私は幼い頃、絵本や童話や児童向けの本を読み漁ることで、「世界の広さ」を感じ取りました。
とてつもなく無謀だったり変人だったりする主人公が、その素晴らしいヘンテコぶりで大冒険をするようなお話は、子供向けの本によくありますよね。
成長したらそれは「荒唐無稽なおとぎ話」に過ぎないのかもしれないけど、子どもの頃の私には勇気を与えてくれました。それが大事なのだと思います。

私が子どもに教えてあげたいのは「いい大学に行ったら幸せになれる」ということではない。
大学なんか行かなくても幸せになれる人はいる」ということです。
だって、ほんとにそういう人はいっぱいいるもん。

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