中国船団を尖閣から追い出す、「テーラード抑止」作戦の可能性

 

かくして私は、尖閣事案については非常に悲観的でありまして、専守防衛で軍事的脅しの裏付けも低い日本が、このように「サラミスライス」的に既成事実を積み上げてくる中国側の動きを抑止することは無理だろうと見ています。

ただし絶対に行われないだろうが、ひとつだけ中国側にとって強力な抑止効果となる可能性のあることを想像しないわけでもありません。

それは「相手と同じことをすること」です。

さて、ちょっとここで話を飛ばします。「テーラード抑止」という言葉があります。これは冷戦中にアメリカの国防関係者や戦略家の間で発展させられた抑止(deterrence)の考え方を踏まえて出てきたものです。

もちろんアメリカにとって、冷戦中の最大の敵は「ソ連」という超大国。そして相手は核武装をしているわけですが、こちらも核兵器を持っているので、お互いに牽制しあってバランスがうまれて戦争を防ぐ、という考え方が「核抑止」(nuclear deterrence)の土台になってました。

ところがソ連が崩壊して冷戦終了。そうなると、いままでソ連というドラゴン並の大きな敵を牽制するためにもっていた大量の核兵器が無駄になり、今度はテロリストや「ならずもの国家」など、いわばヘビのような小規模な敵に対して抑止をすることをアメリカの国防関係者たちは考え始めました。

そこで出てきたのが、コリン・グレイと共にシンクタンクをつくるなど活躍していたキース・ペインという、これまた核戦略の専門家のつくった「テーラード抑止」(tailored deterrence)という考え方です。

「なんだか専門的な言葉だな…」とお感じの方もいらっしゃると思いますが、そのアイディアは意外に簡単。具体的にどういうことかというと、個別の敵に適合させて仕立てるテーラードする)、こちら側がどのような手段で抑止して行くのかを決めていこう、ということなのです。

もちろん相手は「ソ連」というたった一つの相手ではなく、アメリカに危害を及ぼしてくる可能性のある多種多様な潜在的な敵なので、そもそも彼らが何をしてこようとしているのか、その意図を知らなければなりません。そうなるとただこちら側の手段だけではなく、必然的にその相手を調べるためにインテリジェンスの機能が重視されてきます。

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