【英語時事ニュース】歴史の転換点になる米大統領選を読み解く

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海外のメディアで報じられたニュースを解説する『心をつなぐ英会話メルマガ』では、アメリカ大統領選挙について解説しています。今週のテーマは、「大統領選挙の舌戦の向こうに見えるアメリカの『政治家』の危機感とは」です。

海外ニュース

早速、海外ニュースを見てみましょう。

After 30 years in the Senate, during which he transformed himself from war hero into political icon, John McCain now finds himself in more jeopardy than at any time during his political career. And for much of that, he can blame Donald Trump.

訳:30年に及ぶ上院議員として、(ベトナム)戦争の英雄から政界を代表する人物となっていったジョン・マケイン。彼は今ドナルド・トランプのために、政治家としてのキャリアを通した最大の危機に直面している。(ワシントンポストより)

ニュース解説

今回の大統領選挙、ドナルド・トランプは、女性への過去のハラスメントや暴言が暴かれ、「トランプは女性の敵」とばかりに、民主党サイドは攻撃を強めています。CNNなどのメディアには、過去に言いよられたり、「おさわり」をされたりした女性からの証言が報道され、大統領選挙というよりは、ドナルド・トランプの性癖の暴露大会となっています。

一方のヒラリー・クリントンはというと、一度火消しに成功したかに見えた公的なやりとりを私的なメールで行っていたという失態が、組織的なものだったとウイキリークスから暴露されました。それをトランプ陣営は絶好の機会として、脇の甘い候補の犯罪的な行為としてヒラリー・クリントンを執拗に攻撃しています。

候補同士の個人攻撃の連鎖が続く中で、そもそも、大統領選挙の攻防で最も必要な政策論争はどこにいったのかという批判が広まっています。

こうした中、例えばヒラリー・クリントンが絶対に有利だと予想されているカリフォルニア州などでは、ゲリー・ジョンソンに投票しようという人がでてきています。ゲリー・ジョンソンは、元ニューメキシコ州知事で、リバタリアン党の公認候補です。

リバタリアン党とは、個人の権利を最大限に容認し、徴税や徴兵はもとより、麻薬や児童ポルノなどへの公権力の規制をも否定する政党です。極端な理想主義だとして、マイノリティの弱小政党だと思う人もいるかもしれませんが、この主張を支持する人は少なくないのです。例えば、犯罪の増加に対して銃規制を唱えるとき、多くのアメリカ人は銃を所持することは、個人が個人を守る最低限の権利だと考えます。

また、国民全体が健康保険を持てる制度をと民主党がとなえると、そもそも徴税によって個人を縛り付けること自体がよくないことで、同様に国家が予算をもって健康保険制度を導入することは問題で、健康保険にはいるかどうかは完全に個人の判断だという根強い反論があります。アメリカの中に伝統的に残る、個人の自由と自立を最優先させようという考え方の延長に、リバタリアン党があるわけです。

リバタリアンの考えを持つ人は、例えば犯罪による個人の拘束は、他人の自立と存在を妨害したときのみに適応されるべきだとして、国家による個人への介入を極力否定し、最小規模の政府の存続だけを認めています。実は、こうした考え方はアメリカの伝統的な考え方として共和党の中にも深く根付いているのです。

共和党が政党として妥協して、個人や地方の権利よりも国家の利益を優先するときには、党の中に不満が吹き出します。その動きが、リバタリアン運動へと直結していったことは過去に何度もありました。保守党といわれる共和党の考え方を純化してゆくと、そこにあるのがリバタリアンの発想なのです。

共和党の内部矛盾は、こうしたリバタリアンとしての意識を持ちながらも、国家としてのアメリカは強い軍隊を維持し、世界へのプレゼンスを持ち続けようと主張することです。そんな矛盾が表面化したとき、共和党からリバタリアン党へと移籍したのが、元ニューメキシコ州知事のゲリー・ジョンソンをはじめとした一派なのです。

ここで面白いことに気付きます。

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