このように、学校現場での「いじめ防止法」の効果が疑問視されていることを受けて、現在、同法の見直しが検討されています。10月12日に文部科学省いじめ防止対策協議会は、「防止対策の素案」を提示しました。その中で、「教職員がいじめ情報の共有を怠れば懲戒処分」になり得ることを周知するとしています。この点は、学校の隠蔽体質に大きく切り込んでいると言えます。
このように評価できる点がある一方、大きな疑問点もあります。それは、素案では「いじめの範囲」として「好意であっても、相手が傷ついたらいじめ」、「けんかは双方向のいじめ」という考え方が示された点です。具体例として報道された内容は、
- 算数の問題を解こうとしていたAさんに対し、Bさんが親切心から解き方と答えを教えたところ、あと一息で正解にたどりつこうとしていたAさんが泣きだした。
- AさんはBさんに「もっと友だちと積極的に話した方がいいよ」と助言したつもりだったが、対人関係に悩んでいたBさんは、その言葉で深く傷ついた。
- 相互にネット上で悪口を言い合っているケースは「双方向のいじめ」。となっています。
この3例を読まれていかがでしょうか。いじめの定義としての「相手の心が傷ついたらいじめなんだ」という考え方は大切ですが、ここまで行ったら「極論」です。これを受け入れるならば、例えば、授業中に先生から「騒がしい。静かにしなさい」と注意された子が泣き出したらそれは「先生によるいじめ」ということになってしまいます。何事も行き過ぎは危険です。
お互いの心が理解できないで起きるトラブルは「いじめ」ではありません。また、ケンカからいじめに発展することはありますが、ケンカは「双方向のいじめ」ではありません。「有識者」と呼ばれる先生方が、こんなこともわからないのでしょうか。