誰の味方? 参院・安保論戦、新聞各紙の扱いに大きな違い

 

PKOで戦闘に加わる可能性

【毎日】の1面トップは「駆けつけ警護 追加」「南スーダン 自衛隊PKO」「政府検討 安保法施行後」という見出し。見出し通りのことを、安保法施行後の来年3月に行う考えを、複数の政府関係者が明らかにしたという。3面の「クローズアップ2015」には違憲性を追及する野党中国の脅威を協調する政府の対比で論戦の模様が記事になっている。5面の社説は礒崎首相補佐官の発言問題を取り上げ、「これが政権の本音では」ないかと問いかける。

uttiiの眼

この種のセンセーショナルな記事が《毎日》の紙面を時折飾る。残念ながら、検証のしようがないこと、仮にその通りにならなくても誰も困らないことなどを考えると、信用性はイマイチだ。寧ろ、現在継続中の自衛隊によるPKOは南スーダンのみなので、法案が成立後、その可能性を云々できるのはここのみということにもなる。だから、具体的な検討事実がなくても、記者の聞き方によっては、「政府関係者」たちが「まあ、そういうことになるよな」という答え方をする可能性はあるだろう。以上、推測を含めての感想であって他意はない。因みに、この記事には関連記事がない。

しかし同時に、そのようなリアリティが確実に存在することも確かだ。法律が成立、施行されれば、南スーダンで今も反乱勢力として活動する組織に他国軍が襲われたときには、自衛隊は「駆けつけ警護」に従事する、分かりやすくいえば戦闘に加わることになるのは理の当然だ。当然、死者が出る可能性も高く、また相手を殺す可能性も高いだろう。安保法案はそのような法律群であり、しかも、自衛隊員が海外での戦闘に参加する可能性は、このPKOのケースがもっとも高いのではないかと思われる。そのことに警鐘を鳴らしてくれる記事ではある。

主権者の声を聞け

【東京】の1面トップ、見出しは「『安保法案』参院審議」「『反対』広がり多彩」。

様々な分野で、様々な方法によって「反対」の声を上げてきた人たちが、どれだけ増えてきたか、視覚的な効果も考えて作られた記事。学生のグループ「SEALDs」のツイッターのフォロワーは5月に6,000から7,000だったのが、今は3万6,000に。法案に反対する学者の会に賛同する研究者の数は、呼びかけ人61人に対して、現在1万2,000人以上など。(怒りの火の玉に見立てた?)赤い玉が膨張したように描かれている。掲載されている写真は、28日に日比谷野外音楽堂に集まった、安保法案に反対する人々の映像。「うねり」という題が付けられている。

関連記事は2面に「質問時間 延ばす与党」との見出しで、参院で質問時間を野党に譲る余裕を失った安倍政権についての記事。その隣には「首相、補佐官更迭を拒否」という太字の強い見出し。3面には「柳沢協二氏の安保国会ウォッチ」が5段拡大版であり、「補佐官発言は政権の本音」と、《毎日》の社説と同様の見方。6面に質疑の詳報。

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以前にも書いたが、《東京》の特徴は、問題の当事者、主人公は誰なのかという問いかけを常に用意している点だ。安保法案がどうなるかという問題は、確かに、国会内の勢力分布によって決まってくることだろう。だが、その中で少数の野党に出来ることの範囲は、国会外で国民=有権者がどれだけ声を上げるかにも大きく依存している。そもそも、主権者の声を聞くべきだということでは、与党議員も、どれだけ反対が多く強いかについて真剣に考え、自らの議員としての行動に反映させるべきだ。その意味で、委員会審議が始まった翌日の1面トップに、法案反対の声がどこにどのように広がっているかを記事にしたことには、大きな意味があると思う。

>>次ページ 読売新聞が表現してくれた政権の本音とは?

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