誰の味方? 参院・安保論戦、新聞各紙の扱いに大きな違い

 

これを「無の境地」とは言わないが…

【読売】の1面トップは「医薬品保護 米が譲歩」「TPP『7~8年』で調整」との見出し。

安保法制に関する記事は、2面に「安保法制整備 抑止力に」「首相『揺るぎない同盟示す』」との見出しで、見出しばかりが目立つ450字ほどの短い記事。その関連の形で、やはりその程度の分量で、礒崎補佐官に関する記事が4面に。さらに11面に質疑詳報。

uttiiの眼

TPPに関するこの記事以外で1面に出ているのは、来夏の参院選から2合区となる公選法改正の記事、新国立競技場について開閉屋根を断念するという話、中日ドラゴンズの谷繁監督兼捕手が最多試合出場を達成した写真入り記事、それに「欧州の今」と題する連載、あとは天気図と天気予報。どこにも安保法案関連記事がない。もしかしたら「編集手帳」くらいは…と思って見たが、参議院は衆議院のカーボンコピーではないかというような話。結局、なかった。

《読売》が1面に載せなかったのは、安保法制の議論に気が付かなかったからではないだろう。むしろ、その中に秘められた、安倍政権にとっての様々な危険性を察知し、話題になることを避けるために、敢えて1面の紙面から排除したのではないか。代わりにトップに持ってきたのがTPPで、しかもこれが日本に不利といわれる著作権問題ではなく、医薬品問題で日本政府がアメリカの僅かな譲歩を勝ち取ったという、なけなしの「手柄話」というのが笑える。どこまでも現政権に忠誠を誓わなければならないらしい。気の毒に。

1つ、興味深い記述を見つけた。4面、礒崎首相補佐官の「法的安定性」を軽視した発言関連の記事中、野党の追及に対して反発する自民党内部の声が紹介されている。

「一方、自民党内では『礒崎氏の発言は法案の必要性を訴えたに過ぎない。批判は、野党による「言葉狩り」だ』(ベテラン議員)と反発する声も出ている」。

これは重大な発言だ。おそらく、発言の主は高村氏ではないかと想像する。《毎日》は社説で、《東京》は柳沢協二氏の口を借りて、「礒崎発言は政権の本音」という指摘を行ったが、《読売》は《読売》のやり方で、やはり「礒崎発言は間違っていない」という政権の本音を表現してくれた。証人喚問が必要なのではないか。

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image by: 首相官邸

『uttiiの電子版ウォッチ』2015/7/29号より一部抜粋

一部抜粋

著者/内田誠(ジャーナリスト)
朝日、読売、毎日、東京の各紙朝刊(電子版)を比較し、一面を中心に隠されたラインを読み解きます。月曜日から金曜日までは可能な限り早く、土曜日は夜までにその週のまとめをお届け。これさえ読んでおけば「偏向報道」に惑わされずに済みます。
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