聞いてないよ年金改革。結局、年金は今後どうなるのか?プロが解説

 

でも保険料上限を決めた以上、年金水準を今までと同じというわけにはもちろんいかない。所得代替率っていうのがあり、男子平均月収に対し、夫婦二人の年金(夫が40年厚生年金に加入して、40年間専業主婦の場合の年金額)の割合を示すものがありますが、今の所得代替率60%台から概ね50%を維持する事を目指すようになりました。

所得代替率についてのマンガ説明(厚生労働省)

18.3%で年金を確保できるのは所得代替率50%ちょいだからです。50%以上を確保というのは年金を生活に機能させるには最低でも50%以上でなければならないとされたから。その為に平成16年にこの保険料上限固定と合わせて、所得代替率を徐々に60%台から50%に持っていくためにマクロ経済スライドというのが導入されました。

マクロ経済スライド(日本年金機構)

マクロ経済スライドは、物価や賃金が上がっても、現役世代の人口減少、そして、年金受給者の増加(平均余命の延び)という年金額の負担の増加を抑制するために導入されました。例えば、前々年に賃金が2.3%上がりましたがマクロ経済スライド0.9%分を下げて年金は1.4%の伸びに抑えた。

マクロ経済スライド調整は見た目は年金額は下がらないけど物価や賃金以上に上がらないから価値が目減りしていく。

これにより、将来、所得代替率を50%ちょいまで持っていき、そこでマクロ経済スライドを終了させて(平成16年改正から順当に行けば2023年終了予定だった)、50%以上を維持する事になったんですが、このマクロ経済スライドは平成16年に導入されたものの去年まで10年間発動しませんでした。

平成16年の所得代替率59.3%は平成26年財政検証時に逆に62.7%に上がってしまった。なぜか? 物価も賃金も上がらないデフレ下ではマクロ経済スライドは発動しないんですね。物価と賃金が上がる事でマクロ経済スライドは発動する。そして厄介だったのは、平成11年から平成13年まで物価が下がった(3年間で1.7%)にもかかわらず、その当時の政府が選挙に不利になる事を恐れて年金額を下げずに年金額を据え置いたという時もありました。

しかし、1.7%の年金過払いが、平成24年には2.5%にまで拡大し、平成23年までの累計年金過払いが7兆円に膨れ上がり、その後毎年1兆円ずつ膨れ上がる見通しになり、この年金過払いの2.5%を平成25年10月から平成27年4月にかけて年金額を下げる事により差を解消して、やっと去年に初めてマクロ経済スライドを発動できました。この差を解消しない限りマクロ経済スライドは発動はできない事になっていたんです。平成27年4月に解消されるまでずーっと本来あるべき年金額よりも高い水準(特例水準という)で年金を過払いし続けていたんです。

このように世代間の公平性や、収支の均衡(保険料の範囲内で年金額を確保)を保つための所得代替率を下げていくためのマクロ経済スライドが10年くらい発動せず、機能しないと収支の均衡が保たれないので、現役世代の力の弱体化(賃金の下げ)に合わせて、年金も賃金の下げ幅にあわせる事が望ましいから、今回の年金改革法案が可決したわけです。

現役世代がギリギリで負担できる保険料の中で、年金額を将来に向かって確保していくためには、長期的に収支の均衡が保たれないといけません。年金というのは、長期的に収支の均衡が保たれないといけないものです。そして一旦支払い始めたらやめるわけにはいかないもの。

マクロ経済スライドがなかなか発動しない中、所得代替率が下がらないのであれば世代間の不公平はなかなか埋まらない。だからこそ、現役世代の賃金が下がった場合はそれに合わせる事が、年金制度を安定させて、給付水準を最低ラインである所得代替率50%以上を確保するには避けて通れないものなんですね。

いつまでもマクロ経済スライドが発動しないのであれば、今の高齢化率27%が2060年辺りに65歳以上人口が40%になるこの少子高齢化の中年金制度を維持していくのは難しい。年金を維持するため上げるために、もっと将来世代の保険料を上げてぶん取ったほうが良いですか? 別に現役世代と年金受給者どちらの味方なんだ!という話ではなく、冒頭で言ったように世代間の合意に基づき、現役世代が老齢世代を社会的に扶養する仕組みを維持していくために、年金水準は現役世代の賃金とバランスを取ろうって話です。

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