両国の「歴史的責任」?
一見、あまり接点がなさそうに見えるトランプ氏と習氏であるが、両氏の思惑は意外と相互補完な関係にあるのかもしれない。
両氏の関係強化が進めば、これまでトランプ氏が掲げてきた「外国への関与を縮小し、政府コストを削減」へと進む可能性がある。それは、習氏が訴えてきた「広い太平洋には二つの大国を受け入れる空間がある」に通じる。場合によっては地域からの米軍撤退なんてことも囁かれるかもしれない。
米中の良好な関係は、日本全体にとって利するところが大きく、本来、失うものなど何もないはずである。にもかかわらず、米中関係の強化を遠ざけたい思惑が席巻する日本社会の空気は何か不自然である。
もし本気で、米軍駐留がなければ中国に侵略されると考えている日本の市民がいれば、それは地域分断で利する人々の言葉を耳にしたからかもしれない。そのような行為を国際社会が許すはずもなければ、それで中国は失うものはあっても、利するものなど何もない。
過去にそれを実行した日本が、その後どうなったかを考えれば明白である。中国・北朝鮮脅威の前は、ソビエト脅威が日本社会に蔓延していた。それ以前はアメリカ脅威だった。日本の市民は、これらを客観的に捉え、冷静に考えるべきである。
東アジア地域の和平を、自らの歴史的責任と捉える中国にあって、現状は恥ずべき事態であると言える。しかし、根気よく米国の説得にあたり、何かと武力に訴えがちなG7を抑え、北朝鮮との6ヵ国協議再開にこぎつけた同国の姿勢は、もっと評価されてもよさそうである。まさに、後に歴史が評価するというところだろうか。
最後に、今回の米中サミット後の多くのメディア報道で、一つ気になるフレーズがあったので紹介したい。それは習氏が発し、トランプ氏が追認したとされている。以下、報じられている両氏のダイアログ。
我々は相互理解をさらに深め、信頼を構築するに至った。我々は、安定的な友好関係構築に向けた発展を続けゆくことであると私は信じている。また我々は、世界平和と安定に資するため、我々の歴史的責任を全うする。
確かに、100%同意見だ。
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