なぜ高性能レーダーを積んだイージス艦が、貨物船と衝突したのか?

 

3点目は、いわゆる「チープ・キル」というリスクです。今回事故で大破したUSSフィッツジェラルドは「アーレイ・バーク級」駆逐艦といって、一隻あたりのコストは800ミリオン、つまりほとんど1,000億円というカネが投じられています。その船体が、一歩運用を間違うと「安いコストで無力化出来てしまうというのは恐ろしいことです。

これに加えて、対艦攻撃ミサイルなどを高度化してくる敵に対しては、本当に万全であるのか、改めて見直す必要があると思います。

米海軍は、このアーレイ・バーク級の次世代として、凄いステルス性を持った巨大艦「ズムウォルト級」というのを開発しましたが、余りに高額なコストのために3隻で中止しています。当然の判断と思います。

とにかく、高価なイージスの無残な姿を見ると、制海権防衛のための抑止力というのは、「高価な戦闘機を搭載した空母」を展開し「ステルス性とイージス・システムを持った艦艇で防衛」という発想だけではない、もっと高度な戦略性を考えていかなくてはならない、そのような危機感を抱かされるのです。

例えば、無人機を使った索敵と攻撃、無人のブイなどを張り巡らした索敵など、技術の進歩による戦術の変化もあるでしょう。同時にこうした無人のマシンに関しては、抹殺しても人命が失われないために、闇から闇へ葬られたり、無力化されても被害国が隠蔽したり、情報戦的な要素も変化するように思います。

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