それは「お金」の話。
築地の再整備は800億円と発表していますが、土地面積の違いなどがあるとはいえ、6000億円にも膨らんだともいわれる豊洲との開きは尋常ではありません。
すでに築地の土壌汚染は明らかななか、果たしてこの数字で納まるのかという疑問。
また、築地を民間に貸し出すなどして、年間160億円の収入を得れば、2050年には黒字化するという話もあります。築地再整備はこの試算を軸としているところがあり、都知事も会見で「豊洲もいずれ老朽化する。その時の費用について、いままで考えてこなかった(要旨)」と述べています。
黒字になるという話は魅力的。そうなるなら確かにそちらの方が良いことは明らか。でも、もやもや。
では結論。
いずれも東京都の試算に過ぎない、ということ。
豊洲整備と移転の費用が膨らんだのも、東京都の試算が間違っていたからで、仮に専門家の手を借りたものであっても、合理性を感じて議会に諮ったのは東京都の職員です。
議会の責任はもちろんありますが、現時点での築地再整備の議論は議会に諮られておらず、すべての責任は都知事と東京都(役人)にあります。
いわば甚大な損害を与えるほどの見積もりミスをした人物や部署に、新社長が見積もりを出させて、それを新提案として発表しているということです。
豊洲移転ありきだったから、築地再整備のための画期的なアイデアがでなかった、という主張を、百歩譲って呑んだにせよ、「豊洲ありき」は東京都の方針であったことは、石原慎太郎氏が都知事だった時代の記者会見や、百条委員会での証言からも明らかとなっている事実です。
すると豊洲移転の方向性を立てた、当時の東京都職員は、東京都の財政を破壊するために方針を立てたということになります。ならば、これこそ犯人を炙り出さなければならない巨悪でしょう。
そうではなく、あくまで老朽化した築地からの移転を目指したものなら、やはり「見積もりミス」という結論に辿り着きます。
石原都政が始まった1999年を、豊洲移転元年としても、まだ20年も経っておらず、そのとき、大卒からの入庁10年で、32才の技術系職員が見積もりに携わったとして、現在でも退官するには早い50才です。
豊洲見積もりの当人ではないにせよ、引き継がれているはずのノウハウからの見積もりを、信じるほうがどうかしています。
ここらについては推論に過ぎませんが、公開されている情報と、公知の事実から導き出される結論は「ご都合主義」ということ。
冒頭で「狡猾」と評価した理由でもあります。
記者会見で都知事が示したのは「方向性」で具体論は一切と言って良いほどありません。だから、具体的な批判ができず、築地の再整備費についても「築地改修案」に過ぎず、実際には仮定条件の多い私案のレベルの話ですから、オフィシャルな見解ではないと弁明が可能。
年間賃料160億円も以下同文。2050年といえば、日本の人口が1億人を割り込むとも言われており、人口が減少すれば土地建物への需要が減るとの指摘があっても、具体論として述べていないとかわすことができます。
批判をかわす、争点をぼかす、という意味で非常に練られたアイデアというわけです。もちろん、それは都民ファーストではありませんが。