どこが「都民ファースト」か。小池知事の築地最終案が小ズルい理由

 

最後に、小池都知事の豊洲老朽化時の費用を築地の賃貸で賄うというアイデアについても、誰も指摘しないので「行政」の性質からの指摘をしておきます。

民間企業にとって、費用対効果は至上命題で、事業所や工場、倉庫の改修費用は利益から捻出するのが理想的です。金融機関からの借り入れで賄うにせよ、キャッシュフローでの黒字がなければ支払いは滞ります。

ただし、豊洲市場は東京都が、都民の生活において、その必要性を認めて開設する中央市場です。そこに投じられるのは税金」ですが、行政の重要な仕事のひとつには「富の再分配」があります。

金持ちから多く受け取った税金で、貧しい人の生活を助けるために支給する直接給付だけではなく、金持ちも貧乏人も等しく利用できる、生活インフラを整備することも富の再分配です。

東京都による無造作な赤字の垂れ流しを支持しませんが、豊洲市場の運営費、また老朽化したときの更新費用も、地元となる江東区やその周辺自治体の生活インフラとして、その必要性があると認めるならば、税金の投入を躊躇う必要などありません。

ところがこれを、単純に赤字黒字と語るのであれば、行政としてもその長としても失格と言えるでしょう。すべてを市場原理に委ねるなら中央市場など不要です。日頃、弱者の味方をしたがるリベラル勢力、リベラルメディアがこれを指摘しないのはおかしな話です。

また、築地を賃貸にして黒字にするとは、形を変えた増税に過ぎません。160億円の賃料を支払う企業は、その経費に利益を上乗せしてサービスを提供するからです。

築地の跡地を利用する消費者から、間接的に所場代として税金を徴収するということです。

これらの試算は繁盛が前提となっているはずです。ならば築地の再移転が実現したとき、仲卸ないしは卸しもまた、高収益を実現しているはずで、それは特定企業への利益誘導となります。

行政の公平公正の観点から見れば、築地新市場での営業権は抽選なりオークションなりの、一定の透明性が求められなければなりません。

豊洲新市場にかかる経費は、富の再分配の理屈から、都民の負担と市場関係者への一定の便益は仕方がないとしても、「食のテーマパーク」は果たして富の再分配か特定業者への利益供与か。この議論も深めなければならない、と都民の一人として考えますが、こうした議論が始まる気配すら見つかりません。

さらに、築地と豊洲の機能移転説が、まことしやかに語られていますが、これを論じる前に、市場の狭隘化を理由に、魚を「足立市場」に残し、青果と花卉を北足立市場に移転した結果を検証すべきです。

市場と物流の変化もありますが、かつては10ほどあった青果の組合もいまはひとつと北足立市場で仕入れる八百屋の義父は嘆いています。

image by: MAG2 NEWS

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【著者】 宮脇 睦 【発行周期】 ほぼ 週刊

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