善悪の判断がつかない子供たち。結論を出さぬ「道徳」授業の弊害

 

それでは、最後に、有名なモラルジレンマの事例問題を解いておきたいと思います。


【事例】

病気のお母さんを看病している親孝行な息子がいます。お母さんは、今、死にかけています。お母さんを治すには、隣町の薬局店にある高価な薬を飲ませるしかありません。しかし、薬を買うお金がありません。息子は、お母さんを死なせるか、それとも薬を盗むべきでしょうか?


私は、かつて少年院の中で、このモラルジレンマ事例を使いながらも、哲学的パラドックスに陥ることなく、「善とは何か」を教えていた、私が尊敬してやまない今は亡き老先生の授業を紹介します。

老先生は非行少年たちに語っていました。

君たちは、短絡的に考え行動し、人を傷つけたり、人の物を盗んだりして、ここに入りました。これからは、決して、犯罪や不法行為をしないと誓ってください。

 

ですから、どんな理由があろうとも、薬を盗んではいけません。どうしても、お母さんの命を救いたいのであれば、立ち止まり、考えてください。今、あなたにお金がなかったとしても、あなたのお母さんを救いたいという気持ちが本物であれば、かならず手助けして、希望をかなえようとしてくれる人たちが現れます。だから相談してみてください。お金の工面の仕方を知ったり、仕事も紹介してくれるかもしれません。先に入院する方法もあるかもしれません。必ず、お母さんは助かると信じてください。

 

もしも、助からなかったとしても、決して人を恨んではなりません。助けようと思いを寄せてくださった人々に感謝してください。そして、お母さんを大切に思った、自分自身を誇りに思ってください。

 

あなた方には、未来への希望と、「これか」という時間という宝物があります。だから、けっして悪い思いで心を曇らせたりしないで、あきらめず努力し工夫することを選んでください。

 

どうしても、運命があなたの思い通りにならなかったとしても、天を恨んではなりません。天はあなたにのり越えられない運命は与えません。苦難を乗り越えたとき、人間として魂の勲章を得られるのです。

私は、あなた方が立派な大人になることを信じています。どうか、先生の言葉を思い出してください。あなたが思う時、必ず先生はあなたのかたわらにいます。

いかがでしょうか。この先生の思いを、子どもたちに伝えてあげていただきたいと思います。

スクールソーシャルワーカー 村崎京子

image by: Shutterstock.com

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