年金が「最低10年加入に短縮」で油断していると、痛い目に遭う

 

今回は年金の未納は多かったものの10年以上は満たしていた人が亡くなった場合の遺族年金を見てみましょう。

1.昭和49年8月25日生まれの男性(今月43歳)

平成30年5月に亡くなるとします。その死亡当時42歳の妻と15歳の子有り。

この男性の年金記録。高校卒業の翌月である平成5年4月から平成13年8月までの101ヶ月は厚生年金。この間の給与(標準報酬月額)の平均は300,000円とします。平成13年9月から平成18年5月まで57ヶ月は国民年金保険料未納。平成18年6月から平成29年12月までの139ヶ月はまた再度厚生年金。

この間の給与(標準報酬月額)と賞与(標準賞与額)の総額の平均(平均標準報酬額)は400,000円とします。

年金額計算に用いる超重要な標準報酬月額や標準賞与額とは一体何?(参考メルマガ記事)

平成30年1月から平成30年4月までの4ヶ月国民年金保険料全額免除。国民年金保険料全額免除中の平成30年5月に亡くなる。だから、期間を数える時は平成30年4月まで。

全体の年金記録としては301ヶ月(25年と1ヶ月)ですが、未納期間が57ヶ月あるので有効な年金記録は244ヶ月。ただ、年金を貰う為に10年(120ヶ月)に短縮されてるからこの人は一応、老齢厚生年金や老齢基礎年金の受給資格を満たしている人。

ちなみに遺族厚生年金を貰うための条件に「老齢厚生年金の受給資格期間を満たした人」も含まれていて、確かにこの死亡した男性は老齢厚生年金の受給資格期間を満たした人なんですが、この男性の死亡では遺族には遺族厚生年金は出ない。まず遺族厚生年金を貰う条件として以下のいずれかを満たさなければいけません

ア. 厚生年金に加入中の死亡。
イ. 厚生年金加入中の初診日の傷病が原因で、初診日から5年経過する日前までの死亡。
ウ. 障害厚生年金1,2級受給権者の死亡(3級でも障害年金の原因となった傷病での死亡なら可能)
エ. 老齢厚生年金受給権者または受給資格期間を満たした者の死亡

まず、ア.とイ.は厚生年金加入中の死亡ではないため除外。ウ.も無しとすると、後はエ.しかありません。このエ.なんですが、確かにこの男性は10年以上を満たしている「老齢厚生年金の受給資格期間を満たした者の死亡」ではあるんですが、実はここは従来通り原則25年以上を満たしてないと遺族年金はダメなんですね。よって、年金保険料を納めた期間+保険料免除期間+カラ期間合わせた期間が25年以上無いから遺族厚生年金は不可

諦めるなかれ。年金を25年納めなくても貰える「カラ期間」とは(まぐまぐニュース参考記事)

じゃあ何の給付も出ないかというと、この男性は国民年金保険料全額免除の間に死亡してますよね。つまり、国民年金保険料を自ら支払わなければならない自営業やフリーターとか無職、学生などが被保険者である国民年金第1号被保険者期間の時に死亡しています。ちなみに、厚生年金や共済組合に加入してる人は国民年金第2号被保険者という。国民年金第2号被保険者の扶養に入ってる人を国民年金第3号被保険者という。だから国民年金からの支給なら可能。国民年金からの遺族給付としては、遺族基礎年金という年金が支給されます。

なお、遺族基礎年金は死亡当時に生計維持している「子供がいる配偶者または子供にしか支給されない。もし、遺族厚生年金であれば配偶者、子、父母、孫、祖父母というふうに範囲が広く、遺族基礎年金の範囲の狭さがわかりますね。

年金でよく言われる生計維持とか何なのか?(参考記事)

妻には15歳の子供がいるから、遺族基礎年金の支給対象になる。妻が遺族基礎年金貰ってる間は子の遺族基礎年金は停止する。ちなみにここで言う子供というのは18歳年度末までの子をいいます(子に一定の障害がある場合は20歳まで延長される場合もある)。

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