遺伝子変異をみて治療法を選択する
ある臓器のがんについて特別な遺伝子変異を調べることによって治療法の選択の参考にする方法も開発されつつあります。例えば早期の乳がんで特別な遺伝子の活動性があることがわかれば、手術後に抗がん剤による化学療法を受けなくてもよいかもしれないという研究が出ています。同様な研究は前立腺がんでもおこなわれています。
代表的ながん抑制遺伝子であるP53の変異を持つ人ではがんに罹るリスクが一般の人と比べて高くなります。そのような遺伝子変異を持つ人は、一般の人に対するがん検診を行うだけではがんの早期診断はなし得ない可能性があります。
これはまだ研究段階ではありますが、P53の変異を持つ人で全身のMRIを定期的に撮るという研究の試みも検討されています。このような試みには過剰診断のリスクもありますので、実臨床で行うかどうかは、臨床研究の結果をきちんと評価してからとすべきでしょう。
新しいバイオプシーでがんをみつける
がん細胞の遺伝子を調べる際の問題点はがん組織を生検する必要があることです。通常、組織の生検は針を刺したり、メスで切り取ったりなどの侵襲的な処置を受けることを意味します。そんななかで登場したのがリキッドバイオプシー(liquid biopsy)です。がん細胞はその核内にある遺伝子DNAの断片を持続的に血液中に放出しています。血液を採血して調べることでこれらの断片を分析する技術が開発されつつあります。血液や体液を使う病理検査なのでリキッドバイオプシーとよばれています。
リキッドバイオプシーを応用した研究が試みられています。その中には、ある薬剤ががんに効くかどうかの研究も含まれています。例として、PARP(パープ)阻害薬があります。PARP阻害薬とは、がん細胞内でPARP(損傷したDNAを修復する酵素の一つ)が機能することを妨げる薬剤のこと。がん細胞の消滅を促す薬です。
リキッドバイオプシーは根治療法を受けた患者のモニタリングにも応用される可能性もあります。今はCTなどの画像検査で再発がおきていないかどうかをみるのが主流ですが、画像検査より感度か高い検査となると予想されているリキッドバイオプシーが使われるようになるかもしれません。
文献
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