今度はテスラ車。自動運転2度目の死亡事故が「お粗末」な理由

 

報道ならびに警察発表によれば、この女性は灯火のない夜間の暗闇を、事実上、自動車専用道路である中央分離帯のある片側2車線の道路を、まず2車線を横断し、中央分離帯の茂みを突っ切り更に反対側の2車線を渡り「闇の中をロービームであるにしても点灯して走行して来た」車が、自分を認めて止まるという判断の下に、堂々とその前に登場したことのようです。

ちなみに、アメリカには自分が世界の中心だから絶対に譲らない」つまりは、「車は止まってくれるものとして堂々と渡るカルチャーがあります。もっといえば、自転車乗りの一部には、特に「自分は車と対等だから絶対に譲らない」と考えて行動する人がいます。恐らくこの被害者はそうした行動を取ったのでしょう。

ですが、この時は完全自動運転車になるわけですが、「マッピング上は、まず歩行者が出て来ないゾーン」であり、そこを闇夜に「認識しにくい自転車を押した歩行者」というシルエットで登場、自動車は60キロ出ていたという中では、残念ながら相当に高度な自動運転車でも認識できなかった可能性十分にあります。

一部にはライダー(レーザー光照射型のセンサー)で空間スキャンしていれば引っかかったはずという指摘もあります。ですが、ここからは憶測になりますが、ライダーというのは消費電力が大きいので、走行中常時フル稼働はしない仕様になっている場合があるわけです。この地点のように、中央分離帯のある、ほぼ自動車専用道のしかも夜間ということでは、もしかしたら切っていたのかもしれません。

ということで、カリフォルニアの事故と、アリゾナの事故は全く性質の違うものと言えます。まず、アリゾナの事故は、残念ながら「この種の歩行者とのヒヤリハット」については、まだまだシミュレーション不足だということを露呈した格好で、開発に軌道修正を迫るものだと言えます。その意味では、この女性の犠牲は極めて残念な悲劇ではありますが、より安全な自動運転車の開発という意味では、ムダにはならないと言えます。

一方で、カリフォルニアの事故は、明らかなヒューマンエラーということもあり、その一方で、システムのエラーもお粗末なものであり、何とも虚しい感じがします。前向きな評価をするのであれば、大容量の電池を搭載した自動車の衝突事故が大きな車両火災になるということを示した中で、EV一般における消火システム改善への強い警鐘になったことぐらいでしょうか。

image by: ARIMAG / Shutterstock.com

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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