どうした習近平。米国の対決姿勢に焦り軍事行動をエスカレートか

 

この中国船によるベトナム船撃沈の少し前、3月31日にベトナムのハノイで開かれた「大メコン圏(GMS)首脳会議」の首脳会議に出席するためにベトナム入りした王毅外相は、ベトナムのチャン・ダイ・クアン国家主席や、ファム・ビン・ミン・ベトナム外相などと相次ぎ会談し、「領有権問題の解決は、健全で持続可能な両国関係の構築に向け非常に重要だということで合意した」と説明しました。

中国とベトナム、南シナ海領有権問題の対話による解決確認

両外相は、市場開放を背景に貿易や投資が拡大し、両国間の関係は良好に発展していると述べていますが、両国間の2017年の貿易は1,000億ドルを突破しているということです。

これほど被害を被っているベトナムが、表立って中国を非難できない理由はここにあります。ベトナムが経済的に中国に依存していることを中国は利用しているわけです。

とはいえ、このような対話があったにもかかわらず、そのすぐ後にベトナム船を撃沈する中国側の行動は不可思議です。

「大メコン圏(GMS)首脳会議」で王毅外相は、「一帯一路で最も大きな恩恵を受けるのはGMSだ」と発言して存在感を示しましたが、ベトナムのみならず、カンボジアやラオスに対しても、自分の味方となるようにカネをばらまいているのは言うまでもありません。中国は1月にカンボジアのプノンペンで開いたメコン川流域国との首脳会議でも、3億ドルのファンドを立ち上げるといった支援を明言しています。

中国・東南ア、インフラや通関で協力

しかし、その中国企業によるメコン川流域の開発計画では、自然破壊の懸念が高まっています。中国企業は、世界遺産などの観光スポットが点在するラオス南部のメコン川流域のコーン滝周辺に、ホテルやレストラン、ショッピングセンターなど、100億ドルの投資を行っているそうですが、これまでの中国の海外でのインフラ投資が、自然破壊などで地域の不興を買っているため批判が高まっているそうです。

【ラオス】中国企業によるメコン川流域の開発計画で自然破壊の懸念

中国主導の一帯一路に対しては、世界中から懸念の声があからさまに聞こえるようになってきています。4月21日、米華字メディアの多維新聞は、「中国・北京に駐在するEU28カ国の大使のうちハンガリー大使を除く27人中国の一帯一路を批判する報告書に署名した」とドイツメディアが報道したことを紹介したそうです。

EU27カ国の大使、中国主導の経済圏構想「一帯一路」に連名で反対―米華字メディア

27カ国の大使らは、利益を独占するのは、中国政府による無制限の補助金を受け取った中国企業だけで、これは自由貿易プロセスを損ねるものだと批判していそうです。ようやく、欧州も、一帯一路のとんでもないカラクリに気づいてきたといえるでしょう。

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