天安門事件で学生を殺した中国共産党が、民主化の波に殺される日

 

滅びたソ連、生き残った中国

ところで、なぜソ連は崩壊し、中国は生き残ったのでしょうか? 私は、「国家ライフサイクル理論」で解釈しています。ロシア革命が起こったのは1917年。ソ連建国は、1922年。中華人民共和国が誕生したのは1949年。ロシア革命の32年後です。ペレストロイカがはじまった時ソ連はとっくに成熟期でした。ソ連は、独裁者スターリンの時代(1924~1953年)に成長期をむかえ、一気にアメリカに次ぐ超大国になっていた。

一方、中国が成長期に入ったのは、トウ小平が開放路線を決意した1978年末。天安門事件が起こったのは成長期の前期であり、共産党には勢いがあったのです。ペレストロイカに誘発され、自由化・民主化運動が起こったものの、それは政権を転覆させるほどにはなりませんでした。

ちなみに、2000年代半ば、日本では「中国崩壊論」が流行りました。「08年の北京オリンピック、10年の上海万博前後、バブルが崩壊。一気に体制崩壊まで進む」というのです。しかし、私は05年に出版した『ボロボロになった覇権国家』の中で、「中国は、08~10年に起こる危機を短期間で乗り切るだろう」と書きました。その理由は、「中国がまだ成長期だから」でした。

中国の変革は近い

しかし、時代は変わっていきます。成長期の国は、必ず成熟期に突入する。では、中国はいつ成熟期に入るのでしょうか?私が見るに、中国は現在、「成長期後期の最末期」にいます。これも10年以上前から書いているように、2018年末から2020年頃成熟期に突入すると思います。

習近平は、二つのことを熱心に研究させているといいます。一つは、ソ連崩壊です。彼は、「ソ連崩壊は、バカなゴルビーが民主化、自由化したのが原因だ」と考えている。それで習は、逆に独裁を強化している。もう一つは、「日本のバブル崩壊」です。なぜ起こったのか? どうすれば回避できたのか?

研究は、一定の成果をあげるかもしれません。しかしこれらは、「ダイエットをすれば老化を遅らせることができる」といった類の話です。人間に時の流れを止めることができるでしょうか?

盤石に見える習近平体制。しかし、それほど遠くない未来に、私たちは中国の変革を目撃することになるでしょう。

 

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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