ポリエチレンと塩ビってどう違うの?身近なプラスチックの豆知識

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いまの50代が子どもだった時代は、コーラやジュースの容器も、母親の鏡台に並ぶ乳液・化粧水も「ガラス瓶」が当たり前でした。それから半世紀近くが経ち、私たちの生活には「プラスチック」が台頭し、なくてはならないものになってしまいました。今回の無料メルマガ『アリエナイ科学メルマ』では、著者で科学者のくられさんが、そんなプラスチックの様々な材質とその特性について詳しく解説しています。

身の回りのプラスチック

最初はどれも同じプラスチックなのですが、だんだんと見分けているうちに、ヒヨコ鑑定士のごとく、どんな物質なのか見えてくるようになってくるのがプラスチック。とりあえず身の回りのプラスチック商品の裏に素材が書いてあることも多いので、そういうのを見ていると、この素材は…ってだんだん見るだけでわかるようになってきます。

ポリエチレン

スーパーのレジ袋から、灯油ケース、アイスクリーム容器の蓋、シャンプーの容器などなど、最も多く使われているプラスチックです。ちなみに製造法はかなり超科学が必要で石油原料であるナフサを熱分解し得られたエチレンを1,000~4,000気圧という、とんでもない高圧環境下でラジカル化させ重合させるという、実験室では手軽にできないような合成法にて作られています。現在は触媒や合成環境を変え、様々な性質のポリエチレンが作られ、身近なものではクリアファイルとか下敷きにもなってるわけです。接着剤がききにくいのが難点です。

ナイロン

石油化学工業では超大手、泣く子も黙るデュポン社の発明品。ナイロンという言葉はもともとは商標だったが、現在はアミノ結合で結びついた高分子つまりポリアミド系繊維の総称で、ロープからストッキングまで、伸縮性の繊維にはかなり使われています

ポリ塩化ビニル(塩ビ)

数あるプラスチックの中でも屈指の縁の下の力持ちという印象が強い。非常に長期間の耐水性・耐酸性・耐アルカリ・多様な耐溶剤性を持つ。かつ難燃性であり、電気絶縁性も非常に高いと、長期間にわたって使用しなければいけない電線の絶縁被膜や水道管などに多く使われている。ただ紫外線には若干弱く、紫外線が当たり続けると、分子内の塩素がラジカル化しボロボロになります。洗濯ばさみとか、とにかくタフな現場で使われることの多い素材。燃やすとすさまじく臭いのが特徴。

PET樹脂

今や使ったことが無い人がいないであろうペットボトルのペットこそ、PET樹脂。polyethylene terephthalateの頭文字をとってPETというのは、小誌読者には改めて紹介する必要もないくらいには有名なプラスチックである。フィルムや磁気テープの他、毛布やフリースといった衣類へも使われている。

ABS樹脂

アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンと3つの分子が共重合することによって作られるプラスチックなので、頭文字をとってABS樹脂と呼ばれている。耐熱性がほどほどに高く、すべすべした質感が良く、またインクの乗りが良いためテレビやゲーム機、パソコン筐体、レゴのようなブロックなどのオモチャなどはほぼこの樹脂で作られている。

フェノール樹脂(ベークライト)

電子機器や耐薬品製品などに使われているハイテク用途の多いプラスチックだが、歴史は古く今から1世紀以上昔、アメリカ人化学者のレオ・H・ベークランドがフェノールとホルマリンを縮合させ工業化に用いた歴史あるプラスチック(フェノール樹脂の発明自体は、さらに30年ほど前)。熱を加えることで硬化する熱硬化性樹脂として最も有名な樹脂であり、3つの分子が三次元的に立体的な網目構造を持っているため割れにくいなどの機械的特性が高く、加工に向いている。耐熱性、難燃性に優れ、耐薬品性もあるため、電子機器の基板や試薬瓶の蓋といった用途に広く使われている。

シリコーン樹脂

有機ケイ素化合物が連なったプラスチックであり、シロキサン結合(Si-O-Si)を主骨格とするプラスチックで、その分子量から、液状のシリコーンオイル、シリコーンゴム、そして硬いシリコーン樹脂と硬度が液体から固体まで自在という点で非常に特殊な高分子といえます。

PETF

いわゆるテフロンというもの。最近はPETFで作られたまな板などもあり、目にする機会は増えてきたが、まず普通の人は、フライパンのコーティング程度でしか見ないはず。熱に強く(350度ほど)、フライパンの表面で油の使用を減らすほか洗いやすくするなどの働きがある。半年くらいの使用でとれてしまうので、定期的に買い換えた方が良い。

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シリーズ15万部以上の不謹慎理系書「アリエナイ理科ノ教科書」著者。別名義で「本当にコワい? 食べものの正体」「薬局で買うべき薬、買ってはいけない薬 」などを上梓。学術誌から成人誌面という極めて広い媒体で連載多数。

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【著者】 くられ 【発行周期】 週刊

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