中国につくか、米を選ぶか。ドイツの選択が決める世界覇権の行方

shutterstock_628591232
 

米国が主張する「次世代5G通信網からの中国ファーウェイ製品排除」に、英国や日本などは既に同意済ですが、世界GDPの22%を占める欧州各国は未だ明確な方針を固めていない状況です。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では著者で国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、NATO軍最高司令官があえてドイツを名指しにしファーウェイ製品排除の対応を迫っている点に着目し、その理由を解説しています。

ファーウェイ排除で、米独に温度差

皆さんご存知のように、2018年米中覇権戦争がはじまった。それでアメリカは、「ファーウェイを5Gから排除する」と決意しています。現在、アメリカイギリスカナダオーストラリアニュージーランド日本などが排除する方針。

しかし、ドイツは揺れているのでしょうか。こんな情報が出ています。

ファーウェイ採用すればドイツ軍との通信を断つ、米欧州軍司令官

3/14(木)13:55配信

 

【AFP=時事】中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ、Huawei)をめぐり、米国が欧州諸国に対して、同社を第5世代(5G)移動通信網構築への参入から排除するよう圧力を強めている。米欧州軍のカーティス・スカパロッティ(Curtis Scaparrotti)司令官は13日、ドイツがファーウェイの技術を採用した場合には、ドイツ軍との通信を断つ方針を示した。米国と欧州の同盟国は、中国政府と緊密な関係にあるファーウェイは安全保障上のリスクをもたらすと懸念し、5G通信網構築の入札からファーウェイを排除してきた。

ドイツがファーウェイの技術を採用したらドイツ軍との通信を断つ」そうです。なぜ?

北大西洋条約機構(NATO)軍最高司令官を兼務するスカパロッティ氏は13日の米下院軍事委員会で、ドイツを念頭に置いた欧州との貿易交渉に関する質問を受け、「特に5Gについて、周波数帯域幅の情報処理能力や性能は途方もないという点で、電気通信の根幹に関わる」と懸念を示し、防衛通信網内にそうした危険が存在する国とは通信しない考えだと述べた。
(同上)

まあ、「ドイツがファーウェイを採用すれば、アメリカとの通信内容が中国に知られてしまう」ということでしょう。確かに困ります。しかし、NATO軍最高司令官がわざわざドイツに言及している。つまり、「ドイツは迷っている」ということでしょう。

ドイツとアメリカの軋轢

ドイツといえば、世界第4位の経済大国。しかし、エマニュエル・トッドさんのように「EUは、事実上のドイツ帝国だ!」という人もいる。つまり、ドイツは、EUを支配していると。そうなると、ドイツは、「巨大な力をもっていることになります。

GDPでみると、アメリカは世界GDPの約24%、EUは約22%、中国は15%、日本は6%。というわけで、ドイツ(=EU?)は、世界で2番目のパワーをもっていることになる。

そんなドイツはアメリカと問題が多いのです。まず、トランプさんはメルケルさんが大嫌い。はじめて会ったとき、握手も拒否したぐらい嫌い。そして、政策面でもたくさん軋轢があります。たとえば、ドイツは、イラン核合意支持。アメリカは、離脱した。ドイツは、パリ協定支持。アメリカは、離脱した。トランプさんは、「NATO加盟国は、もっと軍事費増やせ!」と要求している。ドイツの軍事費は、GDP比で1.2%しかなく、トランプさんは「少なすぎだ!」と怒っている。トランプさんは、ロシアとドイツを結ぶガスパイプライン「ノルドストリーム2」プロジェクトに反対している。アメリカは、「欧州のロシア依存が高くなりすぎる」と主張している。しかし、ドイツは、「ただアメリカ産の液化天然ガスを売りたいだけなんじゃないの?」と反発している(もちろん、アメリカ産ガスの方が高い)。

というわけで、アメリカとドイツ間の問題は多い。そうなると、ドイツは当然ロシアとか中国の方にむかってしまう。そんな状況になっているわけです。

print
いま読まれてます

  • 中国につくか、米を選ぶか。ドイツの選択が決める世界覇権の行方
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け