新年度あるある「名刺交換」と「握手」は心理学で攻略せよ

 

距離の近さは親しさに比例する

人間が社会的な場面で、相手との間で自然に取っている距離には心理的な「親しさ」が反映しています。二人の人物の距離の取り方を観察していればその人たちの社会的関係が推察できるのです。

大学の授業などで、しょっちゅう隣の席に座っている男女は、ほとんどの場合恋人どうしです。そんな二人が別々に離れて座るようになると、恋は破局したとみるべきでしょう。

異性関係に限らず、大教室などの授業では、知りあいの学生どうしは詰めて座りますが、よほど混雑していない限り、見知らぬ学生どうしは、ひとつ席を空けて座ります。

人間に限らず、サルの群れなどでも、親しい個体どうしは近くにいます。

小さな子ザルは母親にベッタリですし、少し年長になった仲良しの子ザルたちは、しょっちゅう一緒になって遊び回っています。

サルの群れを研究する生物学者は、こうした距離と接近行動(2匹がお互いに近くにいるためにはどちらかの個体が相手に接近する必要があります)を指標に、群れの中の社会的な関係や地位などを調べるのです。

「かくれた次元」というベストセラーを書いたエドワード・ホール氏は、私たち人間が相手との社会的関係に応じて無意識に一定の距離を取るということを明らかにしました。文化によって多少の伸縮はあるものの、物理的距離と心理的距離の比例関係は世界中に共通です。

「公衆距離」「社会距離」「個体距離」「密接距離」

ホールは、距離を4つのゾーンに分けました。

一番遠いのが「公衆距離」で3.6m(3m@日本)以上。
これは、大統領が演説するとか、社長が朝礼でスピーチするとか、大道芸人がパフォーマンスをするとか、路上ライブとか、いわゆるパブリックなこと(個人的な人間関係ではなく不特定多数を相手に何かをすること)をやる場合に必要とされる距離です。
大学の授業なんかもパブリックなサービスの一種なので、受講者の中に自分の子供がいようが、浮気相手がいようが、授業は「他人行儀」にやる必要があります。そのためには最前列と少なくとも3mの距離が欲しいわけです。

この内側、1.3m(1m@日本)~3.6m(3m@日本)が「社会距離」です。
皆さんが買い物に行ったり、街を散歩したりするときに、見ず知らずの相手と自然に取っている距離がこれです。社会生活を営む上で、見知らぬ相手と自然に取る距離です。
ですから、初対面の人と挨拶をするときも、最初はこれだけの距離を取っているはずです。

さらにその内側、45cm~1.3m(1m@日本)が「個体距離」です。
友達や仕事仲間顔見知り、といった人たちと共有するのがこの距離です。立食パーティーなどで、グラスを片手に誰かと談笑しているとき、貴方は無意識にこれくらいの距離を保っています。もし、それ以上接近すると、二人は誰の眼にも「ただならぬ関係」であると映ります。

この一番近い距離、45cm以内の「密接距離」は最も親しい者どうしに許される距離です。
親子、夫婦、家族、恋人、親友といった親密な関係の人がこのゾーンに入れます。
腕を組んでパーティーに登場する夫婦やカップルは、当然45cm以内のゾーンを共有していますし、母親にまとわりつく子供も、孫にエスコートしてもらう老婦人も家族とこの距離を共有しています。

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