新年度あるある「名刺交換」と「握手」は心理学で攻略せよ

 

ニワトリが先でもタマゴが先でもOK

こうした距離の指標を考慮に入れると、握手や名刺交換といった挨拶の儀礼は、「社会距離(1m~3m)」から個体距離(45cm~1m)」に入るための儀礼であったことがわかります。

つまり、社会距離しか許されない「見知らぬ」関係から、お互い、一歩ずつ踏み込んで個体距離を共有する「知り合い」になりましょう、という儀礼なのです。

そして、これはこれで一定の効果があるのです。たとえごく僅かでも、二人を親密にする効果があるから、これまで延々と続いてきたのです。

物理的距離と心理的距離の関係を知ると、普通の人は、「親しいから近くのゾーンを共有できる」つまり「心理的距離の近さが原因で物理的距離の近さが生じる」という因果関係を理解したところで満足してしまいます。

しかし、心理学者はこれだけでは満足しません。これはまだ、事実の「半分」に過ぎないのです。

逆もまた真なり

握手や名刺交換の儀礼は逆の可能性を示唆しています。つまり、「物理的な距離の近さを共有することが心理的距離を縮める」ということです。いろいろと実験などをしてみると、これもまた真実なのです。

幼稚園児などは、最初の日に隣りどうしの席になった子供や、お迎えのバス停で一緒になる子供と仲良くなります。学生寮などの調査研究でも、部屋が隣りどうしとか同じフロアの学生から先に仲良くなります。

要は、ニワトリが先でもタマゴが先でもどちらでもOKということです。

これを「単純接触効果」などと呼んで推奨している人たちもいますが、嫌いな相手が近くにいる(あるいは接触して来る)とますます嫌いになるという実証研究もありますから要注意です。熱心に接近すればするほど、ストーカーは嫌われますものね。

接近行動には「口実」がいる

それでは、どうすれば相手に嫌われずに接近(近い距離を共有)することができるのでしょう?

そこでヒントになるのが、当初から話題になっている握手と名刺交換の事例です。

そもそも、なぜ、見知らぬ二人は一歩ずつ近寄ったのでしょう?なぜなら、それが社会的な「礼儀」であり「マナー」だからです。

つまり、私たちの社会においては「マナーに則(のっと)った接近行動は許されるどころか大いに歓迎されるのです。乗り物やエレベーターでのエスコートやさり気ない気配り。立食パーティーで、飲み物やオードブルを取って来るといった気の利いたサービス。社交ダンスやパーティーゲーム。マナーに則った接近行動を実行する機会は山ほどあります。マナー、礼儀正しさ、といった「口実」を味方につければ、人間関係はさらに自由度を増すはずです。

もしあなあたが、若い後輩や部下をお持ちなら、ジェントルマン(あるいはレイディー)になることで人生が豊かに楽しくなるという秘密をこっそり教えてあげてください。もちろん、妙に気取る必要はありません。今風で良いんですよ。

image by: PhotoByToR / Shutterstock.com

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