【書評】世界的投資家が、10歳の日本人だったらすぐ日本を去る訳

 

ロジャーズ氏は外部環境が整えば北朝鮮がすぐにでも解放されると見る。その時に真っ先に開かれるのはツーリズム観光業)とも指摘する。それはロジャーズ氏が大韓航空に投資していることにもあらわれている。朝鮮半島の統一で、韓国・北朝鮮の国内旅行で活気がもたらされると予想しているのだ。このほか韓国の農業や鉱山業、漁業などにも期待をかける。

ただ気がかりなのはアメリカの政治でありさらに中国ロシアの思惑だと指摘する。アメリカは在韓米軍を持ち続けるであろうし、最後まで北朝鮮への経済制裁を続けると予想する。さらに、ロシアや中国も地の利を生かして、北朝鮮に近いエリアに港湾施設や道路などを建設しており、早くも陣取り合戦を展開しているという指摘は、なかなか日本からは見えにくいがゆえに参考になる。

このほか近年、成長の鈍化が指摘されている中国だが、実際にはまだまだ成長の余力があるとして、環境ビジネスや鉄道などのインフラ産業ヘルスケア分野の中国株に注目し、実際に中華系航空会社の株も保有しているという。一帯一路構想でインフラ景気には期待でき、世界の中でも中国の鉄道事業株は安泰だと見る。その一方で、まだまだ経済は閉鎖的で、国内に多くのカネが閉じ込められているのは大きな問題だとして、閉鎖経済の解決を訴えるのも忘れない。

このほかインドは見逃せない国だが、官僚制の悪弊が残り、言語や民族集団、宗教も多い中、まだまだ発展途上だと指摘。ロシアは多くの人に敬遠されているが、それゆえに投資のチャンスはあり、農業や航空会社など今後成熟してくる業界は狙い目だという。実際、肥料会社やアエロフロート航空の株を持っているとも明かす。

投資哲学として紹介される、「誰も目をつけていないものを買え」という考え方は参考になる。もちろんすべてが予想通りになるものでもないが、ロジャーズ氏の長年の投資経験から編み出される世界の見方や成長分野の見極め方は多くの投資家の関心を集めるだろう。数年後に振りかえったとき、本書で示された内容はどこまであたっているのか。その検証が楽しみである。

image by: Shutterstock.com

本郷香奈

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