コンビニ、スーパーなどのお菓子コーナーでは、絶えず商品の入れ替えが行われています。そんな目まぐるしく新商品が投下されるお菓子業界にあって、ブルボンが息の長いファンを獲得している秘密はどこにあるのでしょうか。今回の無料メルマガ『繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座』では著者で人気コンサルタントの佐藤きよあきさんが、ブルボンの「泥臭い販売戦略」を詳細に分析しています。
なぜ、ブルボンは売れ続けるのか?
私がスーパーの店員として勤めていた時、売り場で衝撃的な会話を耳にしました。
「ブルボンが一番美味しいわ!」。
二人連れのおばあちゃんの一人が発した言葉でした。私は多少なりとも味覚に自信を持っていたので、非常に驚きました。
あのブルボンが一番?
失礼ながら、田舎の人たちだから味音痴なのか、と思ってしまったのです。
私も小さい頃からブルボンは家にあったので、よく食べてはいました。しかし、それは母親が買ってきているからであって、自分から欲しいと思ったわけではありません。特に美味しいと思ったこともありません。あるから食べる。ただ、それだけ。なぜ、母親がブルボンをよく買っていたのかも考えたことはありません。
私にとってはその程度の存在でしかなかったブルボンが、なぜ長年に渡って売れ続けているのでしょうか。「一番美味しい!」という言葉を聞いて以来、気になって仕方がなかったので、ブルボンの売り場およびお客さまを観察するようになりました。
中高年以上のお客さまのカゴには、「シルベーヌ」や「ルマンド」、「ホワイトロリータ」など、昔からの定番品が入っていることが多かったと思います。女子高生から20代の女性は、比較的新しい「プチシリーズ」をよく買っていました。
幅広い年齢層の人がブルボンを買っている。私の思っていた以上に売れている。これは、どういうことなのでしょうか。
パッケージのデザインやネーミング、価格を他メーカーと比較してみても、優れた点は見つかりません。申し訳ないのですが、“ダサい”し、“B級”に見えます。洗練されているとも言い難いのです。
そこで、これは食べるしかない、と考えました。全部というわけにはいかないのですが、定番品や新しいものも含めて、かなりの種類を食べてみました。1口食べて、「うわっ、これ美味しい!」とは、残念ながらなりません。3口食べて、「まぁ、結構美味しいかな?」。6口7口食べて、「これ美味しいなぁ~」と、変わっていったのです。
これは、何を表しているのでしょうか。
どれを食べても、新しい感覚の味ではありません。どこかで食べたことがあるような味です。つまり、遠い記憶に残っている味なので、食べていて飽きないのです。“安心する味”とでも言うのでしょうか。どうやら、これがブルボンの秘密のようです。
私は売り場にいたのでわかるのですが、ブルボンの新商品に斬新さはありません。ハッキリ言うと、どれも他メーカーのパクリではないのか、とも思えます。実際、良く似た商品は多いのです。
しかし、流行のものをパクっているのではなく、世の中にある程度定着している商品なのです。馴染みのあるお菓子をブルボン風に作った、というだけ。例えて言うなら、「おふくろの味」のようなものでしょうか。
誰もが知っていて、味の予想もつくから、安心して買え、安心して食べられる。そして、食べ続けても飽きない。それが、ブルボンという存在なのではないでしょうか。
私は、ブルボンを批判しているのではありません。むしろ感心しているのです。決して一流の会社が取る戦略ではありませんが、石橋を叩いて、叩いて、叩いて渡る、確かな戦略だと言えます。
ここまで徹底すれば、戦略は二流でも、企業としては一流だと言えます。
image by: ブルボン(BOURBON)- Home | Facebook