コンビニ業界の理想の姿は
【毎日】は6面経済面に2本の記事。《読売》と逆で、ローソンの記事が先に来て、オーナーからの聞き取りの記事が後。いずれも扱いは大きくない。
まずはローソンについて。見出しは「ローソン、値札に『軽』減税率」。ローソンは、「増税後は軽減税率が適用されるテークアウトの総菜の需要が高まると見込んでおり、9月初旬から総菜などの新商品を順次発売する」という「逞しさ」を見せている。
コンビニオーナーらからの聞き取りについては、「9月に掛けて全国8都市で121人を対象に実施する」という。オーナーらからは、本部に支払うロイヤルティー(加盟店指導料)が高いとの声、あるいは国に対しても「業界をどうしたいのかが見えない」との批判の声も上がっていたという。《読売》でも見解が引用されていた消費者団体の代表は、「国としても何らかの望ましいビジネスモデルを示す必要があるのではないか」と踏み込んだ発言をしているようだ。
偽装中小企業
【東京】は1面トップと3面に続く特集「消費税8から10」。見出しは「小売業 自ら中小企業化」「ポイント還元狙い資本金減ラッシュ」「税金投入 正当性に疑問」(以上、1面)、「小売り間競争に不公平感」「減資ラッシュ 決済端末補助など目当て」「ポイント還元策の副作用」(以上、3面)。
1面記事。キャッシュレス決済のポイント還元制度に参加して、「国からの支援を受けて集客する狙い」で、資本金を5,000万円以下に減らして「中小企業」になる事例が続発しているという。
キャッシュレス決済時に5%のポイントを還元する制度の対象は、「資本金5,000万円以下または従業員50人以下」の中小店舗のみ。端末の補助金も、中小店舗なら実質負担ゼロになる形で受けられる。
帝国データバンクによれば、「減資」が確認されたのは2018年1~7月が252件だったのに、2019年の同期には412件と大幅に増加。7月には神奈川県内のスーパーが1億円から5,000万円に減資。3月には埼玉県の百貨店も1億円から5,000万円に減資。《東京》がその理由を尋ねると、両社は「今後の資本政策の柔軟性や機動性を確保するため」などとして明言を避けたという。
このポイント還元の原資は国民の税金。本年度2,800億円の予算が組まれている。大きな企業が「減資という帳簿上の操作で恩恵を受けるなら、税金投入の正当性に疑問が生じるのは必至」とする。世耕経産相は、「期間終了後、再度増資するというケースが見られた場合には申請時点にさかのぼって対象外としたい」と言っているが、これはあやふやな話。
キッチリ5,000万円まで減資しているところから見ても、実態としては「減資のふり」、「偽装減資」と言えそうだが、ほとぼりが冷めるまで増資しなければ、スンナリ切り抜けられてしまう。世耕大臣が口にしたような曖昧な対策では対処のしようがない。また企業側からすれば、ポイント還元制度に参加するために「減資して何が悪い」ということにもなるだろう。記事によれば、中小企業向けの優遇税制を狙った、節税のための減資も存在しているくらいだという。
しかし、こんな、企業の怪しげな動きまで誘発するようなポイント還元制度は、そもそも消費税率の10%への引き上げという政策の危険性を、できるだけ消費者に実感させないようにするための小細工にすぎないというところに根がある。
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