貧乏人は諦めろ?大学入試の英語民間試験導入は誰のための改革か

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2020年度から大学入学共通テストで活用される英語民間試験を巡り、当の受験生や高校サイドからは疑問や見直しを求める声が上がり続けています。それでも聞く耳を持たない文科省の姿勢に異を唱えるのは、健康社会学者の河合薫さん。河合さんは自身のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』で、教育の現場が不安や反発を感じざるを得ない、文科省の傲慢かつ拙速杜撰な制度「改悪」の進め方を批判しています。

※本記事は有料メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』2019年9月18日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

お金持ちの子供しかいらないの?

来年度から始まる大学入学共通テストへの英語民間試験導入に、反発が相次いでいます。

英語民間試験は、大学入試改革の目玉として、2020年度から大学入学共通テストで活用されるものです。

大学入試センターが、英語の「読む・聞く・話す・書く」の4技能を評価できる7種類の試験を認定。原則として高校3年生(現在の2年生)が来年4~12月に受けた2回までの試験の成績が、入試センターを通じて出願先の大学に送られ、合否判定に活用される予定です。

試験料は3,000円~20,000円程度かかり試験会場も首都圏などに限られることが予想されています(流動的)。朝日新聞と河合塾が共同で実施した調査では、大学6割高校9割が民間試験に問題がある」と回答。9割超が家庭の経済力が影響する」「公平性を担保できない」などを理由としてあげました。

一方、大学側では、東大、京大、名古屋大が、「民間試験の成績だけでなく、高校による英語力の証明書でも認める」とし、東北大、北海道大、京都工芸繊維大は20年度は民間試験の成績を合否判定に使わないと明言しています。

先月文科省が開設した英語の民間試験の情報をまとめたポータルサイトは「未定」という文字が部分が目立ち、明らかに準備不足であることがわかりました。

それでも文科省には「何が何でも2020から!」という破ってはいけない決め事があるようで、前文科相の柴山昌彦氏は高校生のやり取りにまで刃を向ける始末です。

発端は今月の6日、柴山氏が英語民間試験の実施団体のうち、英検(日本英語検定協会)と協定書を結んだことをツイッターで報告。この書き込みに対し、高校3年生と教師を名乗る投稿者が英検への不満などについて数回やりとりをし、高3生が、「私の通う高校では前回の参院選の際も昼食の時間に政治の話をした」などと書き込みました。

それに対し柴山氏は高3生の投稿を引用し「こうした行為は適切でしょうか?」とツイート。高3生は「友達とご飯食べながらこの政権はあそこはダメ、この党はここがダメと話し合うことは高校生はだめなんですか?」と尋ねたのに対し柴山氏はスルーしました。

それに対し「何が問題なのか?きちんと答えろ!!」などと批判が殺到したのです。

また、内閣改造で文科相になった萩生田光一氏が、「問題があれば、制度を磨いて、国民、受験生の皆さんに納得いただける試験にブラッシュアップしたい」と記者会見で述べたことで、これまた炎上し…。

入試という子供にも親にとっても大きなイベントが、「誠実という言葉とはかけ離れた形で変えられようとしているのです。

要するに「黙ってろ!俺たちの言う事聞けばいいんだよ!」ってことなのでしょう。

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