立派な学歴や、資格をたくさん取得している事にプライドを持つことは決して悪いことではありませんが、ビジネスの現場において重要なのは、やはり「仕事の能力」に尽きるのではないでしょうか。今回の無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』では著者の梅本泰則さんが、書類上の経歴に囚われ過ぎてしまった人が陥りがちなパターンを紹介しています。
学歴・社歴のワナ
ある会合で一人のスポーツショップ経営者と会いました。初対面です。たまたま席が近くでしたので、名刺を出して挨拶をしました。ところが、相手の反応がよくありません。いくつか話題を変えながら会話を試みましたが、何だか興味がなさそうです。
「へえ、そう」
「それで?」
「そんなことはないですよ」
会話がすぐに途切れてしまいます。しかも、口調がまるで上から目線。とてもスポーツショップの経営者とは思えません。商売をしている人なのですから、もう少しそれなりの応対が出来てもよさそうなものです。仕方なく、私は会話を続けることをやめました。
何か私に不満でもあったのでしょうか。会合が終わってから、知り合いの方に聞いてみました。
「あの人はどういう人なのですか。何か機嫌でも悪いのでしょうか」
すると、
「ああ、あの人はいつもそんな感じだよ。某有名大学出だからね」
と教えてくれました。そうか、頭の良い優秀な方でした。とはいえ、社会人として、商売人として、あの対応の仕方はいただけません。もしかしたら、あの経営者は「学歴のワナ」に引っかかっているのかも。
学歴の優れた人は、往々にしてその学歴にプライドを持っています。すると、中には自分より学歴の劣る人を「下」に見てしまう人がいるのです。これが「学歴のワナ」。
学歴と社歴
私の周りにもそうした人が何人かいます。あなたの周りにも自分の「学歴」をほのめかしながら話す人はいませんか。またやけに他人の学歴を気にする人はいませんか。その人にとっては「学歴」が人の評価の物差しです。
しかし、優秀な大学を出たからといって、仕事が出来るとは限りません。社会人にとって、物差しは「仕事の能力」です。優秀な学歴を持った人が、そうでない人よりも低い評価を受けることも多くあります。「学歴」のプライドはずたずたです。
そうすると「学歴のワナ」にはまっている人は「●大学卒のくせに」といって自分を慰めます。この人は、この先も「学歴」にすがって生きていくのでしょうか。
これと同じような現象に「社歴のワナ」があります。あなたの周りに自分の所属している会社や所属をしていた会社を自慢する人はいませんか。その場合は、たいがい知名度の高い大きな会社です。「私の会社はこんなすごい事業をしている」「私はこの会社でこんな実績を残してきた」としきりに訴えます。それはそれで素晴らしいことには違いありません。
この人は、自分のことを「すごい」と評価して欲しいのかもしれません。しかし、裏返してみれば、自分の自信の無さが「社歴」を唱えさせているかも知れないのです。
しかし、いつまでもその会社にいるわけではありません。いずれ退職をしたり独立をしたりする時がきます。そのとき「社歴」を持ち出しても、何の役にも立ちません。仕事をするうえで役に立つのは自分の持つ「能力」です。
もう一つのワナ
そして、これとは逆の「学歴・社歴のワナ」があります。それは、自分の学歴や社歴が劣っていると思っている人に現れる現象です。周りに、やたらと「資格」を取っている人はいませんか。例えば、士業や技術関係の資格です。そうした人たちの中には、学歴や社歴に劣った人がいます。
どうして、そんなに資格を取るのでしょう。それは、資格が学歴や社歴の代わりになると考えているからです。しかし、決して学歴や社歴の代わりになることはありません。
もちろん資格には取得するのがむつかしいものもあります。そのような資格はそれなりに社会的な評価を得ています。だからと言ってもう資格だけで生きられる時代ではありません。戦略構築力とかマーケティングといった能力を身につけなければ、顧客が付かない時代なのです。この資格マニアも「学歴・社歴のワナ」といえます。
そして、もしかしたらあなたのお店にも「学歴・社歴のワナ」にはまっている人はいませんか。学歴や社歴で周りの人を判断している人はいませんか。また、やたら資格を取ろうとしている人はいませんか。
優秀な人ほど、学歴や社歴にとらわれていません。大切なのはその人の仕事の能力です。くれぐれも「学歴・社歴のワナ」には気を付けましょう。
■今日のツボ■
- 「学歴・社歴」にすがっていると、「ワナ」にはまる
- 資格は「学歴・社歴」の代わりにはならない
- 大事なのは「学歴・社歴」ではなく「仕事の能力」である
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