シラク元大統領の国葬に駐仏大使。日本が繰り返す弔問外交の失敗

2019.10.08
 

日本はこれまで、ロシアのエリツィン元大統領(2007年4月25日)、ローマ法王ヨハネ・パウロ2世(2005年4月8日)の葬儀の時、首相級を送らずに弔問外交で失敗しています。

ローマ法王の時は、川口順子首相補佐官が派遣されましたが、これについて鈴木宗男衆議院議員(新党大地)は2007年5月、国会で質問を行い、政府側は出席した各国の首脳について「米国からブッシュ大統領、英国からチャールズ皇太子及びブレア首相、フランスからシラク大統領、ドイツからケーラー大統領及びシュレーダー首相、イタリアからチャンピ大統領及びベルルスコーニ首相、カナダからマーティン首相、ロシアからフラトコフ首相ら」と答弁しています。むろん川口さんは首相補佐官ですから。大国の首脳と会談することはできませんでした。

エリツィン元大統領の時は、「葬儀に間に合うエアラインの便がなかった」というのが理由として説明されました。しかし、その当時でも長距離を飛べるビジネスジェットを13機、政府は保有していたのです。

航続距離の長い順に言えば、ガルフストリームV(海上保安庁が2機保有、12000キロ)、グローバルエクスプレス(国土交通省が飛行点検機として2機保有、11000キロ)、ファルコン900(海上保安庁が2機保有、7400キロ)、ガルフストリームIV(国土交通省が飛行点検機として2機、航空自衛隊がU-4として5機保有、6500キロ)。どの機体も、途中で1~2回給油すればエアラインと同じ飛行時間でモスクワまで飛ぶことができたのです。

シートがエコノミー仕様でVIPに申し訳ないとか、機材を搭載していて狭苦しいとか、色々な「飛ばない」理由が挙げられましたが、定期点検に入っている以外は飛ばすのが国家というものです。国家の任務として「特使」には我慢してもらうのです。いまは国交省のグローバルエクスプレスとガルフストリームIVはセスナサイテーション(航続距離3300キロ)に変更され、ファルコンも5700キロを飛べるファルコン2000が3機導入されようとしています。

そんなことを知ってか知らずか、私の目に触れたマスコミには、日本の弔問外交のお粗末ぶりに触れることもなかったようです。私は安倍首相の「地球儀を俯瞰する外交」に賛成してきた立場ですが、今回の失態について安倍さんはどのようにけじめをつけるのでしょうか。(小川和久)

image by: Frederic Legrand – COMEO / Shutterstock.com

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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