中国にとって「民主」というのは外来のものですから、民主主義を唱えた孫文さえ、頭の中には「王道か覇道か」しかなく、「民動」は存在しませんでした。
共産主義にしても、党としては「天命を受けて民を指導する」「天に代わって人民を指導する」という意識であり、いつでも英明な領袖がいないと、無知な人民は毛沢東の言うような「一窮二白」(すかんぴん)になってしまうのです。
こうした文化風土については、日本の朱子学者や戦後の中国学者ですらよく理解していません。
中国は「中国共産党の生存権」が「人権」以上に大事な国であり、独裁専制を捨てたら、自らの生存権も失ってしまいます。だから「党の生存権」か「人権」の二者択一では、まよわず前者を選ぶのです。
もちろん中国はずっと独裁専制を貫いてきたわけではありません。宋代以前の唐までは貴族社会であり、イギリスの貴族政治に似ていました。唐の時代には中書、門下、尚書といった三省制があり、これは現在の三権分立に近いものでした。
宋の時代になり、貴族や武人に代わって、中華復活の大義名分下で科挙制度が取り入れられ、貴族たちに代わって科挙官僚が力をつけるようになり、これによって皇帝という絶対権力者の下はみな同じ奴隷として、「一君万民」という独裁体制が完成したわけです。したがって、中国の独裁体制は約1,000年続いていることになるわけです。
そして習近平はその独裁制をさらに強化すべく、町中に監視カメラを設置し、全人民を統制しようとしています。習近平は「民主」を、習近平が「民の主」になるという意味に再定義しようとしているのかもしれません。
※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2019年11月6日号の一部抜粋です。初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込660円)。
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