秋田で確信「誰もが同じ」から始まる「障がい者の生涯学習」の形

 

授業は冒頭、生徒を相手にしつつもその背後にいる参加者にも声を投げかけるようなスタイルで「空気」を作りつつ、私がいつも冒頭に行うオリエンテーションとして「出会いを喜ぼう」「みんなで驚こう オーバーアクション!」「みんなで笑おう」「『新しい』ことを感じよう」の4つの心がけを説明した。ウォーミングアップの準備体操では参加者はすでに受講者になっている状態だ。

講義は映像でコミュニケーションに関するチンパンジーの実験、メディアの歴史として日本アニメの変遷を説明し、クイズへと進む。第1問は生徒がそれぞれ考え回答し、第2問は二人一組で考え、第3問は会場にいる方々に聞きに行くことで答えを得るという設定だ。

すると、会場の人のひとり一人が温かい表情で学生らの質問に応え、4組に分かれた生徒たちが問いかける先々で温かいやりとりが交わされ、全体の空気がますます和んでいく。

講義前に司会者から身に余るような紹介をいただいて登壇する時には、硬い雰囲気だった会場だが、私が登壇した時、舞台から見えた生徒と参加者の印象は「温かい包容」のような空気。これが具体的に何を示すのかは、適切に言語化できないのだが、その空気に私は「今日の講義は面白くなりそう」との確かな感覚を得た。

それが私の声音や仕草、雰囲気にも出ていたのかもしれない。そして、生徒たちが会場を縦横無尽に問いかけまわることで、益々その空気は温かくなっていった。

授業後、多くの教育委員会関係者や福祉関係者と「障がい者の生涯学習」する上での大事な考え方を共有することができた。私は、各自治体が教育委員会という領域の中で学校の延長で生涯学習を考えがちなところから、リセットして考えることで見える風景を話した。「誰もが同じ」から始まる発想の上に当事者視点を考慮し、授業を組み立てることを案内した。

これは、それぞれの個性に向き合おうとする真剣な福祉事業所と通底する基本方針のようなもので、この方針のもとに楽しい授業にするには工夫が必要であるが、実はこの工夫という実験は面白い。空振りもあればホームランもある。

そして、今回感じたのは受講側の「温かさ優しさ」に出会う幸運もある。秋田は「田舎で何もない」などと秋田のみなさんが口にされていたが、いやいや確実にあるその「温かさ」はかけがえのないコンテンツだ。これが明日の生涯学習を作っていく。

コンファレンスは関東甲信越ブロックとして、私たちの一般財団法人福祉教育支援協会と文部科学省が主催、東京大学教育学部教育研究科が共催で2月14日に東京大学本郷キャンパスの伊藤国際センターをメーン会場に行われる。どんなことになるのか。参加申し込みは12月下旬から始まる。
「共に学び、生きる共生社会コンファレンス—障害者の生涯学習の推進—」

image by: 「共に学び、生きる共生社会コンファレンス」チラシ

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特別支援教育が必要な方への学びの場である「法定外シャローム大学」や就労移行支援事業所を舞台にしながら、社会にケアの概念を広めるメディアの再定義を目指す思いで、世の中をやさしい視点で描きます。誰もが気持よくなれるやさしいジャーナリスムを模索します。

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