政府与党内で、国内企業に対し5G普及投資額の税率15%を控除する優遇措置を施そう、との意見が出たのは昨年末。しかし「5Gに対応できるサイバーセキュリティー専門家」はどれくらい存在するのでしょうか? 社会として本当に5G普及に対応できるのでしょうか? IT本場のアメリカ在住で人気ブロガーのりばてぃぃさんは『メルマガ「ニューヨークの遊び方」』の中で、5G 普及と専門家不足の相関性について触れ、さらに、人材業界や就活生のヒントになる新情報を教えてくれています。
この先、食いっぱぐれないのはサイバーセキュリティ職??
特集で5G普及の現状と今後の可能性について取り上げたが、技術的な問題から最高パフォーマンスの5G導入はなんだかんだと数年後になると言われている。
しかし、すでに5G普及に伴って必要とされるサイバーセキュリティ人材が不足するとして早急の対応が求められているので、お伝えしておきたい。報道によると、2019年8月時点ですでにサイバーセキュリティに関する人材募集はニューヨーク州だけでも2万人もあった。しかし、サイバーセキュリティは新しい分野であり、しかも日々進化している。インターネットの本場アメリカですら実践で活躍できる人材はほんの一握りしかおらず、しかもすでに不足気味に陥っているのだ。
大学院に専門の学部を設ける話も進められているほど育成体制も整っていない状況で、専門カンファレンスで議論するほど問題となっている。
(ご参考) New York struggles to fill 20,000 cybersecurity jobs
しかも、もし大学や大学院で学んだとしても、大手企業や政府系のオフィスで必要とされるのは外部(アメリカ国内外)に絶対に漏れてはいけない情報を柔軟に管理できる人材。理想は、実践を積んだ対応力のある人材だが、現時点で専門家は少なく、急いで育成体制を整えてもどれだけ不足分を補えるか不明。そのため、サイバーセキュリティ人材の不足が原因で企業や政府機関での5G導入は遅れる可能性もあると見られている。
新しいスマホが発売されても、企業内で使っているソフトウェアのセキュリティが対応しないため新機種に変更できない、という人は多いと思うが、それに近い事情なのだ。
じゃあ、セキュリティ問題がクリアになってから5G導入したら良いだろうと思うかもしれないが、5G導入によるビジネスの発展を考えると早めに対応したいところなのだ。
サイバーセキュリティ人材不足を裏付けるデータとしては、防衛や国家安全保障を中心とするシンクタンクの戦略国際問題研究所(Center for Strategic and International Studies)によるものがある。
欧米8カ国を対象に実施した調査によると、雇用主の82%がサイバーセキュリティ技術者が不足していると回答しており、71%がこの人材不足が原因で企業に直接的かつ測定可能な損害をもたらしている、と答えている。
(ご参考) The Cybersecurity Workforce Gap
なお、以下リンクはサイバーセキュリティ求人のアメリカの州ごとのヒートマップ。企業の集まるニューヨークや政治の中心のワシントンDC、金融機関が集まるノースカロライナ州などに求人が集中している。
(ご参考) Cybersecurity Supply/Demand Heat Map
なお、ワシントンDCの政府機関向けにサイバーセキュリティ関連の仕事を請け負っている会社の人に聞いたところ、新しい分野なのでサイバーセキュリティを学んでおけば就職に困らないとのこと。ただし、新しい分野であるため、学ぶ学校は慎重に選ぶ必要があるそうだ。できれば、大学や大学院などの単位を取れるところのほうが良いという。
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