イオンモールが2021年秋、名古屋にオフィス併設型のモールを開業するそうです。東京都心で見られるオフィス併設型の複合施設をほかの商業圏でも展開しようというイオンの狙いをメルマガ『理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』発行人の理央周さんが解説します。理央さんは、この試みが成功して広がれば、地方の活性化にも繋がると期待を寄せています。
なぜイオンはオフィス併設モールを作るのか?
イオンモールは、「オフィスを併設した複合施設の開発」を強化すると発表しました。名古屋駅近くのノリタケの森のあたりに、2021年秋に開業するとのこと。1から3階に商業フロアがあり、その上にオフィスを造る計画とのことです。
日経新聞(2月12日)によると、その商業フロアにはオフィスワーカーの方々が、勤務後に立ち寄れる、食品スーパーや飲食店を誘致するという計画だそうです。店舗は全部で計160店が入居予定で、近隣住民のほか、オフィスで働く人の利用を想定し、勤務以外の時間を有効活用してもらうことを狙っています。
確かに、自社のオフィスの下にイオンモールがあれば、働いている人たちはランチにも気軽に行けますし、休み時間中にちょっとした買い物もできます。さらに、帰りには夕ご飯の食材を買ったり、服や雑貨などを楽しんで買い物できますよね。イオンとしては、「オフィス需要はまだまだこれからも堅調」とのこと。
2019年9月末に閉店したイオン京橋店(大阪市)の跡地にも、このようなオフィス&ショッピングモールを建設予定で、こちらの方にはシェアオフィスも入れていく予定とのこと。さらにこの動きをひろげ、地方にある既存のイオンモールに、シェアオフィスを追加することも検討しています。
一昨年、ニューヨークに行った時に、ブルックリンに港に近いエリアがあり、そこが街全体を再開発していました。そこには5、6棟のビルがあり、各ビルの1階が店舗で、2階から上がオフィスになっていました。それを見た時に、「働く人たちも便利だし、店舗の売り上げも安定する」と感じたものです。
小売業のマーケティングにおいては、集客をすることがまずは鍵になります。その際に、単独で店舗を持つよりも、イオンのような開発者(デヴェロッパー)が、店舗の集合体(モール)などを作り、そこに集客をするという形のモールと、テナントの店舗の合体での仕組みがこれまでは盛んでした。
しかし、このような業態も多くなってきて、ここ数年はイオンなど大型ショッピングモールも苦戦しています。そんな中で、オフィスを併設することで、オフィスの人たちからの売り上げをベースにしよう、という考え方です。
考えてみれば、商業施設の上の階にオフィス階がある、というビルは東京には多く、森ビルが手がけている六本木ヒルズや虎ノ門ヒルズ、三井不動産がやっている、東京ミッドタウンや日比谷ミッドタウンにCOREDO日本橋、三菱地所の丸ビルなどありますよね。
私も好きでよく行くのですが、平日でもかなりのお客様がいます。ヒルズやミッドタウンには、商業施設とオフィス以外に、郵便局やコンビニ、ホテルやマンションもあり、まるで1つの街になっていて、ここで生活ができてしまうほどです。
このようなモデルをタウンマネジメントといいますが、このモデルの一部を東京以外にも展開していこう、ということです。これが広がると、地方の活性化にも繋がっていきます。その意味では、社会の生態系を変える、今で言うところのエコシステム的な発想ですよね。
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