軍事アナリストがトランプ暴露本の記述「米軍撤退」に呆れた理由

 

では、政治家、官僚、マスコミ、研究者が思い込んでいるような駐留兵力の削減は「撤退」と言えるのか。これは、米軍の基地機能がいつでも使えるように維持管理されているかぎり、「撤退」ではないのです。

企業に置き換えてみればわかることですが、外国に軍隊を駐留させる場合、海外勤務手当が必要になります。できるだけ節約したいのは米国も同じです。日本でいえば、海兵隊の地上部隊の一定割合を米国の領域であるグアムに移駐させれば、海外勤務手当の類いは必要なくなります。それを、米国の軍事的プレゼンスを維持し、練度を保つための訓練にも支障のないよう、ローテーションなどの形にしている面があるのです。

グアムに移駐する海兵隊地上部隊は、必要な場合には民間旅客機をチャーターするCRAF(民間予備航空隊)の制度を使って24時間ほどで沖縄に戻ってきます。つまり、その戻る場所が維持されているかぎり、「撤退」ではないのです。

トランプ氏がそんなことをわかっていなくても仕方ない面があるのですが、安全保障の専門家であるはずのボルトン氏は以上の説明をして、トランプ氏を納得させなければなりませんでした。マティス前国防長官なら、トランプ氏に嫌な顔をされようとも諌言したことでしょう。

ボルトン回顧録は、安全保障の専門家として知られるボルトン氏もまた、日本の官僚や研究者の多くと同様に、こと軍事に関してはアマチュアだったことを、図らずも露呈してしまった面があるのです。(小川和久)

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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