しかし、水と同様に人命に関わる問題が指摘され、記者会見で知事から資料まで配付されているのに、それ以降、突っ込んだ取材や調査報道が行われた形跡が見られないのです。
昨年10月11日、川勝知事は定例記者会見でJR東海が静岡県内2カ所に設けた非常口について、リニア中央新幹線が地震などで緊急停車した場合、人命に関わる危険性があるとした西恭之氏(静岡県立大学特任助教)のメモを提示し、マスコミなどに配付しました。
緊急停車したリニア中央新幹線から3キロの斜坑を徒歩で上り、非常口までたどり着いたとしても、非常口の標高は千石1,330メートル、西俣1,530メートル。南海トラフ地震などの場合、既に静岡県内では県民、来訪者、東海道新幹線乗客等の救助に手一杯なことは確実で、リニア中央新幹線乗客の保護と下山を優先することはできません。そこに冬場という条件が重なると、東京や名古屋の服装のままの乗客が低体温症で死亡する恐れがあります。しかも、非常口から徒歩で10~15キロ行かないと建物もないし、最寄りの集落は30~40キロも離れているというのですから、何を考えているのかと言いたい。
このような緊急時の避難については、スイスのゴッタルドベーストンネル(57キロ)や青函トンネルではきちんと対応策がとられています。
そうした前例を調査していないことは、リニア新幹線の非常口の位置、設計などを見れば一目瞭然です。
大井川水系の問題が決着しても、着工時には非常口の問題を解決してもらわなければなりません。いまからでも遅くないから、マスコミは納得いく回答が得られるまで報道し続けるべきだと思います。人命が失われてからでは遅いのです。(小川和久)
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