フジサンケイだけじゃない。繰り返されるイカサマ世論調査の手口

 

これは、心理学で証明されていることですが、人間は「Aか、Bか」と聞かれた場合には自分の思った通りに回答しますが、「Aか、Aじゃないか」と聞かれた場合には、「A」と回答する人が増えるそうです。このような質問の仕方をすると、「A」が正当になり、「正当なものと、それに反するもの」というイメージを摺り込むことができるため、その設問にあまり興味のない人や「どちらでもない」と考えている人は、無意識のうちに「A」を選択するケースが多くなるそうです。

さて、世論調査と言えば、昔から「憲法改正」に関する調査も各社が定期的に実施しています。時代によって回答に変化があるのは当然ですが、あたしがいつも不思議に感じているのが、読売新聞の世論調査だけ、常に「憲法改正すべき」が過半数を占めているという点です。他の主要紙がすべて「憲法改正すべきでない」が「憲法改正すべき」を上回っていて、NHKの世論調査でも「憲法改正すべきでない」が7割近くに上っていても、何故だか読売新聞だけは「憲法改正すべき」が過半数を占めているのです。

読売新聞が偏向的な世論調査で自民党政権の政策を後押しするというのは何十年も前からのお約束ですが、この「憲法改正」の世論調査に限って言えば、そもそもの発端は政府なのです。とても古いデータですが、今から30年以上前のソビエト連邦時代、中曽根康弘政権下で総理府(現在の内閣府)が実施した世論調査の設問と回答の選択肢を、以下、紹介します。

【問1】ソビエト連邦が軍事力を拡張していますが、いつかそのうち日本が戦争に巻き込まれる可能性があると思いますか?
・大いにある ・ある ・可能性は否定できない ・いいえ

 

【問2】上記で、「大いにある」、「ある」、「可能性は否定できない」とお答えになった方にうかがいます。現在の憲法では、戦争放棄で国の交戦権を認めないとなっていますが、それで国を守れると思いますか?
・はい ・いいえ

 

【問3】あなたは、九条を含めて、憲法を改正する必要があると思いますか?
・はい ・どちらかと言えば必要 ・いいえ

皆さん、これ、どう思いますか?問1の選択肢は、4つのうち3つまでが実質的には「はい」ですし、問3の選択肢も偏っています。「はい」と「いいえ」の間に3つめの選択肢を入れるなら、普通は「どちらとも言えない」ですよね?それに「どちらかと言えば必要」を入れるなら「どちらかと言えば必要ない」も入れないと公平にはなりません。

こんな偏向的な選択肢では、明確な考えを持っていない人たちの多くが「可能性は否定できない」や「どちらかと言えば必要」を選択してしまいます。そして、それらの回答は、自動的に「はい」にカウントされてしまうのです。

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