8月6日、アメリカのトランプ大統領が、米国内での利用を禁止するアプリとして、「TikTok」に続き「WeChat」を追加。日本でも自民党が米国の方針に追随する動きを見せています。メルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』著者で、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんは、精査なしの同調は混乱を招くと指摘。さらに、米国防省認定の「潔癖なネットワーク」からソフトバンクの名前が消えていたことにも触れ、理由の確認と説明を同社に求めています。
トランプ大統領がTikTokに続きWechatを禁止に――ソフトバンクが米国防省認定「潔癖なネットワーク」から脱落
トランプ大統領が大暴れしている。TikTokの利用禁止に続き、今度はテンセントのコミュニケーションアプリ「WeChat」も利用禁止にする大統領令を出した。45日間の猶予が設定されている。
TikTokは特定の使い方、ユーザーであるため、さほど混乱は生じなかった。しかし、WeChatとなれば、中国のユーザーに広く普及しているだけでなく、中国方面と取引のある外国人のビジネスパーソンも日常的に使っているため、大きな影響が出そうだ。すでにSNS上には「洒落にならん」という声も上がっている。
さらにポンペオ国務長官は5つの「Clean Network」を発表。Carrier、Store、Apps、Cloud、Cableを対象にするとした。Storeでは、信頼されない中国製アプリを米国のアプリストアから排除するとしている。Appsではファーウェイを含む信頼できないベンダーのデバイスにアメリカの人気アプリをプリインストールあるいはダウンロードさせないとした。
すでに自民党が日本でも中国発のアプリを規制しようと動き出しているが、さらにアメリカの動きに同調しようとすると、かなり厄介なことになりそうだ。日本で販売しているファーウェイのみならず、OPPOやシャオミも標的になりかねない。また、日本でサービスを提供しているアプリも戦略を見直す必要が出てくるかもしれない。
ちなみに、ソフトバンクは中国発のタクシー配車アプリ「DiDi」を展開している。「自民党の中国発アプリを規制しようとする動きがあるが影響は受けないか」と宮内謙社長に質問したところ「データは日本で扱っているから大丈夫ではないか」とのことだった。ちなみに、DiDiジャパンが提供しているアプリを見てみると、データはシンガポールをベースにする会社とアメリカに共有されているようだった。
ただ、アプリ提供側がどんなに「個人情報を政府に渡すようなことはしない」「データは日本で管理している」と主張しても、アメリカから「個人情報を流用している恐れがある」と目をつけられたら一発でアウトだ。日本政府が何の精査もせずにアメリカに同調しないことを祈るばかりだ。
ちなみにアメリカ国防省が掲載する「The Clean Network」の「5G Clean Countries and Clean Telcos」にはNTTとKDDIのロゴはあるけどソフトバンクはなかった。すでにスプリントの経営から手を引いた状態であり、もはやアメリカからは撤退モードなので、あまり気にする必要はないかもしれないが、「なぜ、NTTとKDDIがあってソフトバンクがないのか」の理由は知りたいところだ。
ソフトバンクがアメリカから排除される相手としてリストに入っていないとなれば、海外展開する日本企業としては、ソフトバンクと付き合いにくくなることもあり得る。ソフトバンクとしては「なぜ、アメリカから相手にされていないのか」をアメリカ国防省に確認し、世間に明確にする必要があるのではないだろうか。
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