「アホノミクス」と吠える浜矩子の論理が破綻している明白な理由

reizei20200908
 

次期総理最有力候補である菅義偉官房長官が、その継承を明らかにしているアベノミクス。合同野党の代表戦の論点にもなっているアベノミクスですが、安倍政権が目玉と謳い続けてきた同政策について、正しい「評価」はなされていないようです。今回、米国在住作家の冷泉彰彦さんは自身のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』で、賛成派・反対派双方の主張の問題点を論理的に指摘しつつ、与野党に対して「アベノミクスを正しく再評価するべき」との要求を記しています。

アベノミクスの再評価をごまかすな

安倍総理辞任を受けて、自民党総裁選と、合同野党の代表選が進行中です。そんな中で、アベノミクスへの評価というのも論点になっているようですが、話の中身は極めて表面的です。

賛成論の多くは、円安政策は継続ということのようです。ですが、その場合にも少なくとも6つの問題点があります。

  • コロナ禍の中で世界中が資金出動をしている中で、日本の円安を維持するのは実は大変
  • 円安を継続すると多国籍企業の日本離れを加速
  • 円安では日本企業が買い叩かれる
  • エネルギー需要が拡大した場合に円安だと辛い
  • 円安のせいで国内改革が進まない
  • 一方で、観光立国を再起動するのなら円安は必須

とにかくこの6点をしっかり考えた上で、円安政策をどうするのか、明言はできなくても、危機感だけは伝わってくるような政策論議を期待したいです。現状は、極めて残念と思います。

とにかく現状のアベノミクス論ですが、日本の現実派からは、

  • 輸出産業は円安で助かり、結果として株高になってよかった
  • 財政出動をやり過ぎると、後世に借金を残すので慎重に
  • 第1の矢は良かったが、第3の矢はスローだったという反省が必要

といった生ぬるい議論ばかりです。この「第3の矢はスロー」という点については、私もそのような言い方に傾いていたのですが、ここは「円安政策が構造改革を阻害していた」という認識が必要な時期であると思います。そんなに難しい理屈ではありません。

多国籍企業の場合に、日本における「日本語と紙による事務仕事」は円安だとコストが圧縮して見えるので改革圧力が弱くなるということが一つあります。そして円安だと国際労働市場と技術者や専門職の給与水準が大きく乖離するので、先端的な人材を国内で採用できなくなる、この2点を考えただけで、円安が改革の敵だということは理解していただけると思います。

一方で左派のアベノミクス批判に至っては、論理破綻の惨状を呈しています。例えば浜矩子という経済の先生は、アベノミクスのことをアホノミクスと呼んで吠えていますが、その内容としては、

  • 安倍政権のせいで生産性向上を迫られた
  • 軍拡のためにGDPが必要で、それで経済の尻叩きをした

などというトンチンカンなことを言っておられます。いいですか、アベノミクスは良くも悪くも円安政策が柱なのですよ。仮にそれをアホノミクスだと言って否定するのであれば、円安でなく円高が良いということになります。

日本経済が現状のままであって、そこに円高が来たら、現在の生産性向上では済まないような大リストラがされるのです。そうでなくては、多国籍企業は利益を出せないからです。働き方改革などのマイナーな改革ではなく、徹底した改革が要求されるのです。事務仕事は資金調達、会計、法務、契約などすべてが英語化されて、日本での紙と印鑑の仕事はもう残らないと思います。

私は、まだ日本の経済社会にはその改革をするだけの余力はあり、ラストチャンスとして取り組むべきと思いますが、百歩譲って、浜先生の立場に立って「そういった生産性のダイナミックな向上策」は非人間的でやめるべきだと考えるのなら、円安政策であるアベノミクスを認めなくてはおかしなことになります。

野党の経済政策もかなり怪しさ満点です。枝野氏などは「まず賃金を上げる」という政策で、それが実現すれば回り回って人間的な社会になるなどというファンタジーを描いていますが、違うと思います。知的で高付加価値な労働が、ジャンジャン国外流出している現状をどう変えるのか、その点に危機感がなければ、絶対に結果は出ません。

いずれにしても、今回の政変を機会にして、アベノミクスの再評価がされると思いますが、とにかく与野党ともに真面目に考えていただきたいと思うのです。

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