一方のファーウェイも、中国政府に対して「グーグル社のアンドロイドOSは独占禁止法に違反している」と提訴した。米中双方がアンドロイドを使わない方向で意思表示をしているのだから、ほぼ決定だろう。
中国政府が中国市場でアンドロイドOSの使用を禁止すれば、中国市場のスマホはファーウェイ独自のOSを使用することになり、グーグルは巨大な中国市場を失う。このままいけば、世界のインターネットとスマホは2つに分断されるだろう。
中国製のスマホは日本やアメリカでは使えなくなり、キャッシュレス決済もできなくなる。中国政府が西側諸国への出国を禁止する可能性もある。そうなれば、最早、中国からのインバウンドは戻らない。問題はデジタルだけで終わらないのだ。
3.米国への門が閉ざされる
この米中摩擦で最も衝撃を受けるのは、中国人民である。最先端のスマホと世界共通のアプリを奪われ、旧式のスマホに逆戻りする可能性があるのだ。一度、便利なサービスを使ってから、不便なサービスに戻るのは、かなり苦痛を伴う。政治的なことは分からなくても、高性能のスマホが使えないというだけで、政府への反感が増すのではないか。少なくとも世界の中で中国が孤立していることが誰の目にも明らかになるだろう。
それだけでなく、米国への留学の途を絶たれようとしている。共産党幹部の子弟が米国に留学するケースは多いが、香港や新疆で人権弾圧に加担した共産党員は制裁として家族を含めてビザの発給が止められている。これも、米国次第で追加されるだろう。
特に、安全保障に関係する理系の学部については、中国からの留学生の受け入れが大幅に制限されそうだ。アメリカへの途が閉ざされることは、中国の若者にとっては希望を失うことにつながる。その恨みもまた、中国共産党に向かうのではとないか。