ただ、温暖化ガスを2050年までゼロにするためには、あるいは、現状から大きく飛躍する目標を達成するためには、日本全国の産学官の組織でこの3つの言葉を排除しなければなりません。
なぜなら、これから多くの前例をつくらなければならず、またこれから多くの新しい取り組みを組織に通す必要があり、そして特に責任ある立場の人たちが、まさに責任を持って、これから「前のものを改めて新しく」しなければならないからです。
壮大な未来を描く可能性のある光を、いかに小さくても決して消させない。「できない」という否定、理屈やネガティブ思考の高い壁を崩壊せよ、と日本全国から声が上げってほしいです。
メイド・ウィズ・ジャパンを実現させるために不可欠なのは、新しいお金の流れ、新しい技術の流れ、そして新しい意識の流れをつくる人材を育むエコシステムです。現在、ケイパビリティが足らないのであれば、「やりたい」という掻き立った意欲を「できる」実績へと積み重ねるキャパシティー・ビルディングこそが、産学官で最も優先すべき事項ではないでしょうか。
先日、日本経済新聞が主催するアフリカ新興テックのセミナーに登壇しました。オンラインで開催され、1150名の申し込があり、その内の200名ぐらいがアフリカから入りました。質疑応答ではアフリカの起業家から、このような声が聞こえてきました。「日本はたくさん質問してくれる。けど、いつ実際に動いてくれるんだ。」
世界がメイド・ウィズ・ジャパンを待っています。
□ ■ 付録:「渋沢栄一の『論語と算盤』を今、考える」■ □
『論語と算盤』経営塾オンライン
『論語と算盤』蟹穴主義が肝要
しかしながら分に安んずるからといって、
進取の気象を忘れてしまっては何もならぬ。
蟹が自身の甲羅にフィットする穴で身を守るように、分を守ることを心掛けるべきと渋沢栄一は説いています。ただ、蟹は脱皮します。脱皮とは「前のものを改めて新しく」することです。脱皮を繰り返して、甲羅は一回りずつ大きくなります。そのため、常に大きな穴を見つけなければなりません。進取の気象とは、まさに革新を繰り返すことでしょう。
『渋沢栄一 訓言集』国家と社会
経済に国境なし。
いずれの方面においても、わが智恵と勉強とをもって
進むことを主義としなければならない。
しかし道理に叶ったことでなければ、
国内でもよろしくない。国際間でもよろしくない。
また他の欠点あるいは微力に乗ずるがごときは、
決して商工業者のなすべきではない。
渋沢栄一が生きていた時代とは異なりますが、仮に令和に渋沢栄一がいたら、「メイド・ウィズ・ジャパン」という時代ビジョンに大いに賛同するのではないでしょうか。なぜなら、それは日本人のウェルビーイングと日本社会の繁栄へとつながっていくからです。
謹白
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