井上科学技術相の「軍事研究強要」で見えた学術会議の任命拒否理由

 

【サーチ&リサーチ】

2016年3月20日付
「「軍学共同にノーの声」九条科学者の会が明大でシンポ開催」の記事中、前年に防衛装備庁が新設され、デュアルユース技術開発のための助成制度ができたことと念頭に、「『デュアル』という言葉を隠れみのに、民生技術に応用できるよと、科学者の心理的負担を少なくして軍事技術に取り込もうとしている。大学の自治、学問の自由に関わる問題だ」という角度からの批判。

*同年4月の記事には、国産ステルス戦闘機X2に利用できる民生技術を取り込もうと防衛装備庁が躍起になっている姿が浮かんでいる。だが、専門家は「軍事で求められる技術と民間で求められる技術は根本的に違う」として。「軍産複合体が巨大化した米国をみると、民間企業による軍事技術の強化は、民生技術の発展を阻害する可能性があり、必ずしも経済効果を高めるとは言えない」とも。

*翌年には内閣府が動き出す。

2017年2月5日付
「軍学共同 防衛省以外も推進、技術開発へ「研究会」内閣府、月内にも設置」の記事。政府は有識者会議を組織し、軍民両用技術の推進を唱える政策研究大学院大学の角南(すなみ)篤教授や、大手防衛企業幹部、日本学術会議の大西隆会長などに参加を打診してい
るというもの。内閣府の目的は「軍事に転用できる大学や民間研究機関などの技術(軍民両用技術)開発を推進」することであり、「研究会は防衛省だけでなく、他省庁も巻き込んで軍民両用技術の開発を進める方策を探る」という。

「軍民両用」の技術開発の体制を造り上げようと、安倍政権がシャカリキになっていた様子が見て取れる。そして、この翌月、日本学術会議は、創立以来2回出した軍事研究を否定する宣言を踏襲する、つまり、改めて、軍事研究否定の宣言を出す(当時の大西隆会長はむしろ「軍民両用」推進派だったが、学術会議としては否定の結論を出した)。

●uttiiの眼

2017年2月の政府の動きと3月の学術会議の動きを見れば、政府の学術会議会員人事への介入の“動機”がクリアーに見えてくるではないか。

*因みに、その後の記事は、米輸出管理法の抜け穴を利用した軍民両用技術の対中輸出…というような内容がほとんど。「軍民両用」の問題は、日本にケース限らず、世界中で軍事技術開発に伴う問題であることが分かる。

あとがき

以上、いかがでしたでしょうか。

菅政権は、任命拒否問題を誤魔化すために「学術会議の見直し」を言い出したというのも本当のことでしょうが、実は、それこそが任命拒否の目的でもあるというのが真相なのだと思います。ただし見直しの要点は、「提言機能の検証」ではなく、学術会議に「軍民両用」を含む軍事技術開発研究へのゴーサインを出させたい、そのような学術会議に変質させたいということなのでしょう。

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image by: English: U.S. Marine Corps Photo by Cpl. Thor J. Larson/Released, Public domain, via Wikimedia Commons

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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