井上科学技術相の「軍事研究強要」で見えた学術会議の任命拒否理由

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未だくすぶりつづけている、菅義偉首相による日本学術会議の「6人任命拒否」問題。その本質ともいえるのが「軍事研究」にあると説くのは、メルマガ『uttiiの電子版ウォッチ DELUXE』著者でジャーナリストの内田誠さんです。内田さんは、参院内閣委員会で井上科学技術担当相が「軍民両用技術(デュアルユース)」という防衛用にも民生用にも使える技術について否定的な日本学術会議に再考を求めた答弁内容から透けてみえた、「任命拒否」と「軍事研究の否定」の因果関係を東京新聞の記事を元に炙り出しています。

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日本学術会議問題から浮上した「軍民両用」を新聞はどう報じてきたか?

きょうは《東京》です。菅総理が日本学術会議の会員候補のうち6名の任命を拒否した問題を巡り、3面に記事がありました。そのなかに「軍民両用」という重要な言葉が出てきます。この「軍民両用」で検索を掛けると、5年分の記事のなかから14件にヒットしました。

まずは3面の記事。見出しから。

学術会議に「軍民両用」検討求める井上担当相 見直し議論絡め転換促す

井上信治科学技術担当相が参院内閣委員会での答弁で、軍民両用(デュアルユース)について、「時代の変化に合わせて冷静に考えていかないといけない課題だ」と述べ、軍事・安全保障分野の研究に否定的な日本学術会議に再考を求めていることを明らかにしたという。

これについて《東京》の記者は「菅義偉首相が進める組織の見直し論議に絡め、学術会議に方針転換を促した格好」と評している。

●uttiiの眼

井上氏の答弁を引き出したのは自民党の山谷えり子議員。インターネットやGPSを例に挙げて「現代は民生技術と安保技術の境界がなくなってきている。学術会議が学問の自由をむしろ阻んでいるのではという声もたくさん上がっている」として、学術会議が軍事目的の研究と一貫して距離を置いてきたことを批判。

井上氏は先月、学術会議の梶田会長と会談し、「さまざまな問題意識」を伝え、学術会議側は「提言機能」について検証し、年内に政府への報告をまとめるものと既に報じられているが、その「さまざまな問題意識」のなかに、「軍民両用技術の研究」を巡る問題も含まれていたことは、これまで公表されていなかった。

記事の中でも紹介されているとおり、学術会議は太平洋戦争に協力した反省から1949年に創立され、軍事研究に反対する声明を60年と67年に出し、防衛省が軍事研究に転用可能な研究への助成制度を拡充した後の2017年3月にも、2つの声明を継承する旨、公表している。そしてこの声明の前後から、「政府による会員人事への介入」が始まっている。

私は10月初旬に「任命拒否」が明らかになった直後から、「軍事研究」の問題が任命拒否につながっていると感じてきた。当メルマガでも、2016年当時の状況について「学術会議内の議論が1年の長期に及び、しかも、玉虫色ともいえる声明が幹部会で承認されたことは、学術会議内の軍事研究に対する見方が真っ二つに割れ、否定派と容認派が拮抗している」と書いている。

任命を拒否された6人は間違いなく「軍事研究否定派」なので、この任命拒否は、学術会議内の軍事研究(軍民両用を含む)に関する諾否に決定的な影響を与えることになるだろう。

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