アパグループ側は原因は工事のミスではなく、経年劣化だと主張し、補修を拒否し、落ちそうなタイルを剥がすのみの対応で、次にまたいつタイルが落ちてくるかわからないので、管理組合はとにかく先に補修工事を実施したのですが、アパグループ側は、管理組合が、補修工事を実施してから費用を請求しているのが釈然としないとして、それに応じず裁判となったものでした。
管理組合、住民の方はよくがんばられたと思います。心から敬意を表したいと思います。先に修繕工事を実施するというのは、勇気がいったことと思います。
今回、9年半でタイルの落下事故があったため、管理組合側の専門家が調査をしたことで、施行不良が明らかになったのですが、もし、落下事故がなくて、大規模修繕工事前の調査だったたら、施工不良が疑われても経年劣化ということにされ、大規模修繕工事を早めて修繕すればいい…という方向にもっていかれたかもしれません(これは、実はよくあることです)。
タイルの浮きに関するきちんとした調査結果があれば、先に危険回避のために修繕工事を実施して損賠賠償請求するということも認められるのだと、勇気をもらえた管理組合もあると思います。
タイルの浮きや落下事故に関しては、以前に記事に書いています。
● なぜ外壁タイルの浮きや落下事故は発生するのか
● タイルの浮き、経年劣化と施工不良の違いは…
また、ここで紹介した、マンションコミュニティ研究会のタイル施工に関する勉強会の記録は下記にあります。
「議事録」の中に質疑応答の記録があり、その中で、裁判官の方が書かれた「外壁タイルの瑕疵と施行者の責任」という論文が紹介されています。
論文の中では、「施工上の不良の判断目安」が示されています。
施工後
5年以内 0%以上
5年超10年以内 3%以上
10年超15年以内 5%以上
15年超29年以内 10%以上
が施工不良の目安とされている中で、14.86%という数字がいかに異常であるかがわかると思います。
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