コロナ後の世界が「資本主義」を今すぐにでも止めるべき納得の理由

 

「人新世」という新次元

「人新世(ヒトシンセイ)」とは、ノーベル化学賞受賞者のパウル・クルッツェンの造語で、人類の経済活動があまりにも過剰になってその痕跡や残骸が地球の表面を覆い尽くすようになった、地球史上で前例のない異常事態に突入したことを、地質年代になぞらえて言い表したものである。実際、高層ビルや工場、道路、ダム、農地などが地表を埋め、海にはマイクロ・プラスチックが浮遊・沈殿し、人工物が地球の自然が耐えうる限度を超えて増えつつある。

昨年12月の英誌「ネイチャー」に載ったイスラエルの研究グループの論文によると、「コンクリートやプラスチックなど地球上で人間がつくり出したものの総重量(人工物量)が、植物や動物などの総重量(生物量)を初めて上回ったかもしれない」という。それによると、20世紀初頭の人工物量は生物量のわずか3%程度だったのに対し、とりわけ第2次世界大戦後、都市開発などで人工物量が急増。他方、生物量は森林伐採や土地利用の変化などで減少しているので、2020年には、地球上の人工物量が生物量である1兆1000億トンを上回ったようだ、としている。

人工物量は年間300億トンの割合で増えていて、これは地球上の人々が、毎週、自分の体重以上の人工物量を生み出していることを意味する。この傾向が続けば、2040年までに人工物量は3兆トンを超える。

いいですか、もう一度、数行上の文章を読み過ごさないで頂きたいのだが、我々一人一人が「毎週、自分の体重〔私で言えば70キロ〕以上の人工物を生み出して」知らん顔をしているということである。1日で7キロ。仮に毎日レジ袋1袋とペットボトル2本を捨てることに加担しなかったとしても、重量で1グラムになるのかどうか。

こういうとてつもない地球破壊に加担しているというのに、レジ袋やペットボトルの使い捨てくらいに気を配れば「なんとかなるのだろう」と思っている精神状態を「平穏」というのであれば、そこへ戻ろうとすることには何の意味もない。そういう我々の偽善を鋭く突いたのがスウェーデンの当時高校生グレタ・トゥーンベリで、「環境に優しい恒久的な経済成長のことしか語らない」大人たちを告発した。「あなたたちが科学に耳を傾けないのは、これまでの暮らし方を続けられる解決策しか興味がないからです。そんな答えはもうありません。あなたたち大人がまだ間に合うときに行動しなかったからです」「システムそのものを変えるべきだ」と。

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