米国がコロナで動けぬうちに。中国が一線を越え台湾を奪いに来る日

 

怖いが“隣国”として手を差し伸べてくれる中国

ASEANで対中非難が出そうになると、カンボジア、ラオス、そしてミャンマーが必ずブロックし、表現が削除されるか骨抜きにされるというのは典型的な効果ですが、コロナ下で、南シナ海問題で中国と対峙する国々も態度を軟化させているのが見えます。

これは、一概には言えませんが、口ばかりで何もしてこなかった米欧への当てつけと失望を表していると思われます。

アメリカ政府については、トランプ前政権下で“アジアシフト”が謳われましたが、実際には北東アジア向けであり、ASEAN/APECは、度重なるトランプ大統領の不在・欠席に現れるように、軽視されていたと言わざるを得ません。

バイデン政権は、アジアシフトでも“同盟国との連携”を通じて中国の脅威に対抗するとしていますが、東南アジア諸国側からはアメリカは信頼できるパートナーと映っているかは不明です。

欧州については、昨年来、中国への過度の依存を改め、インド太平洋戦略を打ち出してきていますが、やはりこちらも、東南アジア諸国政府曰く、「いつまでも植民地政策のマインドが抜けない上から目線の対応であり、アジアのためと謳いつつ、結局は自らの海外での権益を守りたい・拡大したいだけのパフォーマンス」との見方が強いそうです。

【中国は怖い。しかし、“隣国”として手を差し伸べてくれる】というのが、程度の強弱はあるものの、アジア諸国の本音のようです。

だからとは言えませんが、比較的に東南アジア諸国は、ASEANでの内政不干渉の原則も手伝って、中国の強硬策や“蛮行”に寛容に思われます。

その典型例が、【新疆ウイグル地区での人権問題への懸念】と【香港を巡る姿勢】です。

前者については、カンボジアもミャンマーも、他の国々も、欧米スタンダードで見た“人権擁護”の視点からすると、人権尊重のマインドが低いと言われることから、どこか中国の行いに目をつぶっているように見えます。

タイもマレーシアもタイ深南部のモスリム集団であるポンデゥックの扱いに困っており、よく人権侵害を指摘されていますから、その非難のベクトルが自分たちに向いてこないように、中国“国内”での人権侵害の疑いには距離を置く傾向が見られます。

後者については、内政不干渉の原則を盾に、日本や欧米諸国での批判的な論調からは信じられないほど、全くの無関心を装っているように思われます。

中国を余計に刺激するよりは、適切な距離を保つことで経済的な利益の恩恵にあずかろうというのが基本姿勢です。

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