米国がコロナで動けぬうちに。中国が一線を越え台湾を奪いに来る日

 

台湾を併合したOne Chinaの実現という習近平の悲願

台湾の姿勢も非常に興味深い動きをしているように見えます。

中国からの軍事的な(安全保障上の)脅威が強まっている中、それに対峙しようといってくる米国に傾倒しているように思いますが、“台湾は独立国”と叫びながら、水面下で台湾の持つ世界レベルの技術力(特に半導体)を盾に、中国本土との経済的な結びつきを通じた“融和”の可能性も探っています。

中台間には多くの合弁会社もありますし、政治的に対立していても、経済はすでに不可分の関係になっています。思惑や意味するところは異なりますが、すでに経済的にはOne China化しているといえるでしょう。

北京も台北も、それはよく知っています。

台湾政治には国民党(中国寄りと言われる)と民進党(独立派)が存在しますが、どちらが政権の座にあっても、よく言われているほど、対中政策には違いが見えませんし、即座に統合や独立という方向にも振れません。

台湾にいる友人たちによると、「選挙によって与党が入れ替わっても、台湾は台湾のまま居続ける」のだそうです。

言い換えると、現状に対して、台湾の側から特段、急激な変化を起こすことはしないということでしょう。

しかし、同じ心持を北京政府、特に習近平国家主席が持っているかといえば、そうは思いません。

2013年3月に国家主席に就任以来、掲げている【大中華帝国の大復興】の行き着く先には、台湾を併合した中華帝国がイメージされています。

また、ここ2年か3年前から発言にでてくるOne China/One Asia構想の基盤となるのも、台湾を含めたOne Chinaという考え方です。

後任候補を次々と落とし、権力を掌握して、「生涯国家主席・総書記」という方向へ進もうとしている習近平国家主席ですが、そのためには、建国以来の懸念事項であり、last one missing pieceである台湾を手に入れる必要があると考えているようです。

米中対立の真ん中に置かれてしまった台湾ですが、これまでは、対立が深まっていても、アメリカは「中国が台湾を攻撃することはない」と見ていて、同時に北京は「仮に台湾への攻勢を深めても、本当にアメリカが攻撃してくることはない」と踏んでいるが故に、一種の抑止が働いていたように思えます。

自らの構想の完成を目指し、今、あえて対立構造を作り出した習近平国家主席の中国。

一帯一路政策の下、他の大陸や地域にまで及ぶ影響力を築き、一種の中華帝国を作り上げたといえる中国。

すでに米軍の軍事力をも凌ぐのではないかと、そのアメリカに言わせた中国。

第2次世界大戦で荒れに荒れた中国は、見事なまでに復興したといえるかもしれません。

大復興はすでに成し得たと言えるような気がしますが、中国を再度“建国”し、大きな発展を名実ともにアピールし、尊敬する毛沢東氏の偉業に並び、追い抜き、偉大なリーダーとしてその名を歴史に刻むために、習近平氏に足りないのは、まさに台湾ではないかと思われます。

台湾は、物理的なサイズは小さいですが、習近平氏にとっては、とてつもなく大きなmissing pieceであると言えるでしょう。

2023年3月には2期目も終わりを迎えますが、すでに国内におけるすべての役職で序列第1位になっている存在であり、その後も国家主席の地位に留まり続けるためには、現在の中国共産党支配の下での中国のリーダーが誰も成し得なかった、台湾を併合したOne Chinaを実現することが必要だと考えているようです。

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