米国がコロナで動けぬうちに。中国が一線を越え台湾を奪いに来る日

 

習近平の「大中華帝国の大復興」に欠かせぬ台湾

前置きが長くなりましたが、今、習近平体制下で宿願に位置づけられ、繰り返し発言に登場する【大中華帝国の大復興】のLast Missing Pieceと言われる台湾を巡る問題でも、東南アジア諸国はあえてタッチしてきません。

言い換えると【積極的に支持もしないが、批判もしない】という姿勢です。

ちなみに香港国家安全維持法の制定と施行に際しては、欧米諸国からこれでもか!というほどの批判が中国に向けられ、対決姿勢と緊張が高まっていますが、アジア諸国の政府内の友人たちと話すと、【まあ、なんだかんだ言っても、2047年になれば自動的に中国に100%なるわけだし、そもそも英国が勝手にやってきて取ったところだからね。一国二制度も、勝手に押し付けたわけだから、中国がそれを護る義務もなければ、いわれもない】という声をよく聞きます。

香港の場合と違い、台湾と中国(北京)に関しては、「XX年には完全に返還されるという約束」はどこにもありませんが、東南アジア諸国にとっても、直接的な繋がりはないアフリカや中東諸国にとっても、【あくまでも中国“国内”の話】というのが、偽らざる見解のようです。

それを実際には感じているからというのもあるかと思いますが、中国の習近平国家主席は、One Chinaの宿願を叶えるために、このところ、台湾に対する攻勢を顕在化させているように思われます。

台湾への肩入れを強めるアメリカ政府に対して、【ここは中国の勢力圏だから、余計なことをするな】と言わんばかりに、台湾海峡や台湾の制空識別圏に戦闘機を送り込み、全面的な対決姿勢を明確にし始めました。

アメリカ政府はといえば、トランプ前政権の最後に台湾への肩入れを明確にし、それがバイデン政権ではより強化されるように見せることで、【自由主義陣営の防衛】を大義名分にして、習近平氏の野望に正面から対峙しようとしています。

衰退したとはいえ、まだ世界最強の国アメリカの面子をかけ、アジア太平洋地域での覇権を護ろうとしています。

バイデン政権で国務長官を務めるブリンケン氏や、ホワイトハウスでアジア担当の調整官を務めるカート・キャンベル氏曰く、【中国、国家資本主義体制の圧力からアジア太平洋地域を護るために、自由主義を掲げて中国に立ち向かう台湾を防衛することは、アメリカの国家安全保障の目的に合致する】のだそうです。

しかし、仮に中国が台湾を軍事力でねじ伏せ、One Chinaを達成しようと目論んだ際、アメリカは軍事力で本当に中国に対抗するのでしょうか?

トランプ氏がもし第2期目の任期を今、務めているとしたら、もしかしたら、台湾を舞台に米中の武力衝突は起き得たかもしれませんが、“同盟国と共に中国の脅威に立ち向かう”と言いつつも、バランスを重んじてしまうバイデン政権に、アメリカの軍事力をフルに用いた対中戦争は考えづらいと思うのは私だけでしょうか?

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