止まらぬ震災関連死と避難者数の大ウソ。まだ東日本大震災は終わっていない

 

あたしは、大災害による死者の数を一覧にして表わすことが嫌いです。何だか人の命をモノ扱いしているように感じるからです。しかし、この「震災関連死」の問題を理解してもらうために、あえて数字で表してみます。まずは、東日本大震災で被害の大きかった東北3県の震災による死者と行方不明者の合計数を見てください。

岩手県 5,795人
宮城県 1万0,770人
福島県 1,810人

行方不明者を「死」と呼ぶことは不謹慎かもしれませんが、便宜上、これが地震や津波で亡くなった「直接死」の人数です。それでは、震災では幸いにも一命を取り留めたのに、その後の辛い避難生活の中で、持病を悪化させて亡くなってしまったり、自らの命を絶ってしまった人たちの中で、国によって「震災関連死」と認定された死者数を見てください。

岩手県 469人
宮城県 929人
福島県 2,313人

これを見ると、地震と津波という自然災害による被害が甚大だった岩手県と宮城県は、どちらも「震災関連死」の人数は「直接死」の1割以下です。しかし、原発事故という人災によって、自宅は壊れていないのに多くの人々が強制避難を余儀なくされた福島県では、「震災関連死」が「直接死」を追い抜いてしまっています。「震災関連死」の死者数は、復興庁が毎年9月に発表しますので、この数字は2020年9月のものですが、それでは、過去4年間の推移を見てください。

2017年9月

 

岩手県 464人
宮城県 926人
福島県 2,202人

2018年9月

 

岩手県 467人
宮城県 928人
福島県 2,250人

2019年9月

 

岩手県 469人
宮城県 928人
福島県 2,286人

2020年9月

 

岩手県 469人
宮城県 929人
福島県 2,313人

「震災関連死」の人数は、岩手県と宮城県は震災直後から翌2012年までの1年間だけ急増し、その後は「年間に数人」という状態が続いています。しかし、福島県だけは、震災直後から現在まで、ずっと増加し続けているのです。もちろん、年間に100人、200人と亡くなり続けていた2014年や2015年よりは増加が緩やかになりましたが、それでも、福島県だけが今も年間に数十人ずつ亡くなり続けているのです。そして、その内わけを見ると、悲しいことに「自死」が多いのです。

2019年から2020年に掛けての1年間で、福島県の「震災関連死」は27人増加していますが、分かっているだけで、このうちの5人が「自死」なのです。そして、福島県のこれまでの「震災関連死」の累計2313人の内わけを見ると、少なくとも118人が「自死」なのです。

しかし「震災関連死」だけでも国の認定は厳しい上、さらに「自死」と認定されるためには「遺体が避難所や仮設住宅などで発見された」「被災地から避難後に自殺した」「大震災が直接影響したことが遺族の説明や遺書で判明した」などの要件を満たさなければなりません。たとえば、仮設住宅でひとり暮らししていた高齢者の自死したご遺体が発見されても、遺書がなく、証言してくれる身寄りがいなければ、「震災関連死」の「自死」とは認定されません。そのため、実際はもっと「自死」が多いと推測されます。

そして、初めに書いたように、そもそもが「避難者」と認定されていない「自主避難者」が政府発表の何倍もいるのです。その中には、長期化する避難生活で持病を悪化させて亡くなってしまった人たち、将来に何の希望も持てなくなり自らの命を絶ってしまった人たちも数多くいるかもしれません。

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