老人がこのように、はっきりとした善悪の対象として描かれるのは、老人そのものがもつ極端さ、年とともに「極端化するキャラクター」に起因するらしい。極端化……わたしもそうかも~。
年を重ね経験を積むにつれて、怒りっぽい人はより怒りっぽく、優しい人はより優しく、個性が特化して、所得格差も開き、境遇もバラエティに富んでいきます。1990年代の大半を〈変人を探しもとめる〉旅に費やしたという都築響一は、日本中で出会った変人のうち、もっともクリエイティブというか、多産にしてオレサマ人生を疾走していたのは、なぜか圧倒的にじいさんなのだったといいます。
老人ほど容姿、言動、性格において、変化に富んだ存在はありません。これが同じ人間か、と驚くほどです。老人は「キャラクターが立っている」のです。そういう極端さが、神にも鬼にもなり、「いいお爺さんと悪いお爺さん」という書き分けにつながっている。
昔話が語り口の面白さにあるとしたら、こうした老人ほどふさわしい存在はないでしょう。
わたしは編集者時代に、女性スタッフがわたしに向けた「鬼……」というツブヤキを聞き逃してはいない。当時は中年後期だったか。
いいお爺さん 柴田忠男
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