渋沢栄一の子孫が説く「ウェルビーイング」の重要性。ハピネスと異なる“幸せ”の価値観

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ワークライフバランスや働き方改革が進む中で、「ウェルビーイング」という言葉をご存知でしょうか。これは心と身体が健康で美しく、満ち足りた暮らしを送ろうという発想で、自らの幸福度合いにも直結してきます。そんなウェルビーイングの向上が日本にとって重要だとするのは、世界の金融の舞台で活躍する渋澤健さん。NHK大河ドラマ『青天を衝け』の主人公で、日本の資本主義の父・渋沢栄一の子孫を持つ渋澤さんは、ウェルビーイングを意識して声を上げていくことが大切だと説いています。

プロフィール:渋澤 健(しぶさわ・けん)
国際関係の財団法人から米国でMBAを得て金融業界へ転身。外資系金融機関で日本国債や為替オプションのディーリング、株式デリバティブのセールズ業務に携わり、米大手ヘッジファンドの日本代表を務める。2001年に独立。2007年にコモンズ(株)を設立し、2008年にコモンズ投信会長に着任。日本の資本主義の父・渋沢栄一5代目子孫。

「ウェルビーイング」とハピネスの違いとは?

謹啓 ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。

私事ですが、今月18日に還暦を迎えました。また外資系の金融機関・ファンドの世界から脱サラして起こした会社、シブサワ・アンド・カンパニーの20周年も今月です。会社の登記日は自分の誕生日に近い吉日の3月16日にしました。

後になって気づいたことですが、高祖父の渋沢栄一の誕生日(新暦)と同じ日でした。40歳で起業するまで栄一の存在は遠いものでしたが、起業をきっかけに本人が残した言葉との「出会い」があり、今では栄一の思想の現代意義を語らない日はありません。不思議な縁を感じます。

20年前は子供ができて家族が増え、私生活でもちょうど変化の時を迎えていました。当時、赤ん坊の長男を抱きながらふと思いました。「この子が成人になる頃、自分は還暦になっているんだ」と。40歳の自分は、自身の還暦の姿や生活を思い描けませんでした。

しかし、子どもや自分が健康であればその日は必ず訪れるのです。自分はその日のために何も準備していないことを反省し、息子と自分の毎月の積み立て投資を始めました。

これを一つのきっかけとして、日本社会における長期投資の必要性について様々に気づき、そして同志たちとの出会いがありました。2007年11月にシブサワ・アンド・カンパニー社内に「コモンズ」という準備会社を設立、2008年の秋にコモンズ投信と改名し、当局での登録が完了しました。

当時、「論語と算盤」を一緒に勉強していたファンド・マネジャーの友人から「栄一さんと同じようなことをしようとしているんだね」と指摘されました。

そんな身の程しらずなことをしている訳ではないと答えましたが、栄一は日本初の銀行の存在意義を明治初期の日本社会に示すために「一滴一滴の滴が集まれば、大河になる」という表現を用いました。日本全国から毎月の積立投資の「滴」が寄り集まれば、長期投資の「大河」になるイメージと確かにシンクロしています。

栄一の「大河」は、封建国家であった日本が、一般市民も豊かな生活に恵まれる近代化社会へと変革する原動力となりました。

一方、コモンズ投信は、まだまだ小さな存在で「大河」ではありません。しかし設立時から目指していたことは「今日よりも、よい明日」というビジョンを日本社会とシェアして実現させることでした。

時々、「その『よりよい明日』とは何ですか」と聞かれることがあり、私は「一人ひとりが自分の幸せな生活を送れること」と答えていました。

最近、「ウェルビーイング」という言葉を耳にすることが増えましたが、これがまさに「幸せな生活」ではないでしょうか。当時私は、これを「ウェルネス」と表現していました。

2004年に仲間たちと開催した「金融の匠が考える豊かなライフデザイン」という三部構成のセミナーで、「ビジョン」「ウェルネス」「ウェルス」について語り合いました。

それから17年の年月が経ちましたが、あの時みんなでワクワクしていたことが、ようやく一般的になってきました。「豊かなライフデザイン」とは、まさに「ウェルビーイング」にほかなりません。

金融や資産運用の役割として、「ウェルスの向上」だけではなく「ウェルネス=ウェルビーイングの向上」という「ビジョン」を掲げることが、時代の潮流になりつつあります。

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