自衛隊が強くなる。「一般大学出身の陸上幕僚長」30年ぶり誕生の意義

 

私の自衛隊生徒の同期生も、部内選抜を選んだM・T君は指揮幕僚課程もトップクラス、対戦車ヘリのパイロットとしても大きな功績を残しましたが、最終階級は1等陸佐の(一)でした。1等陸佐には(一)(二)(三)があり、(一)は外国の准将や上級大佐のようなものです。

T君の成績は方面総監になってもおかしくないものでしたが、部内選抜出身者の将官枠が存在しないに等しく、しかも航空職種の枠も非常に限られていたため、そのような結果になりました。これは親しい知人が陸幕の人事部長時代に調べてくれたものです。

同じ同期生でも私立大学の夜間部に通い、海上自衛隊に転じたT・T君は航空集団司令官(海将)としてP-1哨戒機の国産化など海上自衛隊の対潜水艦戦能力を飛躍的に向上させました。このT・T君は「Uダッシュ」と言って一般大学出身者として扱われた結果、トップレベルまで昇進できたのです。海上自衛隊と航空自衛隊は、人事面で陸上自衛隊とは少し違う面があるようです。

陸上自衛隊の場合、指揮幕僚課程(CGS)が将官への登竜門であり関門とされますが、それを出た後は出身に関係なく公平に昇進させなければ、米軍のような活力など生まれるはずがありません。努力する者が必ず報われる組織でなければ、戦場で命を預け合う信頼関係は成り立ちません。防衛大学校出身者にも優れた人材は少なくありませんが、吉田さんが30年ぶりの一般大学出身者というのはいかにも不自然な気がします。

新しい安全保障環境に対応すべく、職種の枠も、昔の名残を引きずった普通科(歩兵)・特科(砲兵)・機甲科(戦車)中心から大幅な改革が行われつつあります。B(防衛大学校)、U(一般大学)、I(部内選抜)の区分を超えたマンパワーの発揮を目指して、吉田さんの時代に改革を進めてもらいたいと期待しています。(小川和久)

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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